カラーで見る 独裁者スターリン(2013年・仏C. Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
サイコパス、スターリンの面目躍如 ソビエト連邦の独裁者、スターリンの生涯を、カラー映像で辿るドキュメンタリー。カラー映像は、元々モノクロだったものに色を付けたもので、
『カラーでよみがえる第一次世界大戦』や
『ヒトラー 権力掌握への道 前後編』と同一線上のものだと思われる。おそらく色付けした製作会社は共通ではないかと思う。
基本的には映像で辿るスターリンというコンセプトで、大きな特徴は「色が付いている」という点である。しかし色があるだけで、映像が身近に感じられるのも確かで、リアルな映像として捉えられる。有名なヤルタ会談の映像まで色付きで、今流れるニュース映像に迫る迫力がある。
スターリンのドキュメンタリーということで、当然のことながらスターリンの悪行が紹介されていくわけだが、レーニンが死んだ後、権力を握り、周囲の人間をことごとく粛正していく様子も映像で紹介される。自分に反対する勢力は容赦なく一掃する。反対しない勢力まで処刑する。一説では処刑した人間は100万人にも上り、強制収容所に送られた人間は1800万人というから、あまりに桁違いで想像がつかない。それになんと処刑人数のノルマまであったという。あまりに粛正しすぎたので、優秀な軍人までいなくなり、それが1941年のナチス・ドイツのソビエト侵攻の原因を作ったという。
また内政もことごとく失敗で、集団農場化を強引に進めた結果ウクライナで飢饉が起こるが、これに対処できず700万人もの餓死者を生み出した(らしい)。このドキュメンタリーを見ていると、スターリンは反社会性人格障害(サイコパス)じゃないかと思えるが、いずれにしても非常に多くの犠牲者を生み出したのには間違いない。
全体的にソヴィエト史をごく簡単になぞるという番組だったため、レーニンの死後どういういきさつでスターリンが権力を握ったかとか、ドイツに一方的に責められていたにもかかわらずナチスを撃退できたのはどういう理由だったのかなど腑に落ちない箇所がいくつかあった。そういう点では物足りないが、それでも処刑の映像が紹介されるなど、スターリンの悪行を強調するというテーマにはきちんと沿っていた。それに内容云々より、なんと言ってもカラー映像が良い。映像だけでも見る価値が十分あるというものだ。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ヒトラーvs.スターリン(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カラーでよみがえる第一次世界大戦(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ヒトラー 権力掌握への道 前後編(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『よみがえる“ワルシャワ蜂起”(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ロシア革命 100年後の真実(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『良心をもたない人たち(本)』