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竹林軒出張所

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『愛の新世界』(映画)

b0189364_9213480.jpg愛の新世界(1994年・Gカンパニー)
監督:高橋伴明
原作:島本慶、荒木経惟
脚本:剣山象
音楽:山崎ハコ、かしぶち哲郎
出演:鈴木砂羽、片岡礼子、萩原流行、宮藤官九郎、阿部サダヲ、松尾スズキ、田口トモロヲ、武田真治、塩屋俊、鈴木ヒロミツ、杉本彩、下元史朗、荒木経惟、哀川翔

超異色のフーゾク映画

 風俗嬢の青春を描いた映画。主演のSMの女王様に鈴木砂羽(本作が主演デビュー)、ホテトル嬢に片岡礼子が扮する。
 特異な風俗の世界を丁寧に描いているため、考えようによってはちょっとルポルタージュ風ではあるが、いろいろと見所が多く、最初から最後まで楽しめる。ただし描かれている世界は一般人にとってはかなり異様で、それぞれの(風俗の)仕事のシーンがふんだんに出て来て、裸もたくさん出てくる。したがって映画にはR18指定が付いている。鈴木砂羽を撮った荒木経惟の写真も随所にモンタージュされて、特異な世界を演出している。
 この映画で描かれる風俗の客にはかなり奇妙な人間もあり、現代人って不思議な存在だなーなどと妙に感心したりする。中でもSMクラブに足繁く通ってくる「澤登」という客を演じる萩原流行の演技は絶品で、これは彼の代表作と言って良い。鈴木砂羽も非常にキョーレツな役どころで、この映画を公開時に見て以来、僕の中では鈴木砂羽は怖いヒトで通っていた。96年にNHKで放送された山田太一のドラマ『家へおいでよ』に出て来たときも、なんだかミステリアスな役柄だったが、この映画の影響もあり「コワイ」という印象が強かった。
 この映画、風俗業界の怪しい世界が描かれていて、本来であれば僕のような普通の人間にとってはあまり楽しくなく、「青春映画」という捉え方はなかなかできにくいと思うが、なんと言っても、劇中に流れる山崎ハコの歌が爽やかで「青春映画」であることを再定義するんである。なお劇中で流れる歌は「今夜は踊ろう」(アルバム『十八番』に収録)と「私が生まれた日」の2曲。エンドロールでは鈴木砂羽の子ども時代の映像(おそらく8mmで撮ったもの)のバックに「私が生まれた日」が流れ、これがまた泣かせる。愛にあふれた歌で、世の中にはいろいろな人間がいるがどういう人間であっても彼らの人生を肯定的に捉えられる……というような気持ちになる。
 円画に登場する劇中劇では劇団『大人計画』が協力しているそうで、松尾スズキの他、今をときめく宮藤官九郎や阿部サダヲが劇団員として登場してくる。荒木経惟も写真家の役で(ドキュメンタリー風に)登場。婦人科医の鈴木ヒロミツ、SM客の下元史朗も最高。途中出てくる「Jリーグのチケット付けろ!」などというセリフが当時の世相を反映していて面白い。また女王様の仕事を「セラピスト」と言いのける主人公の感覚も脱帽である。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『山崎ハコ「十八番」(CD)』
竹林軒出張所『新版「ざんげの値打ちもない」』
竹林軒出張所『東京日和(映画)』
竹林軒出張所『家へおいでよ (1)〜(6)(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-05-16 09:22 | 映画
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