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竹林軒出張所

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『イスラーム国の衝撃』(本)

b0189364_8113256.jpgイスラーム国の衝撃
池内恵著
文春新書

絡み合った糸をほどくように
ISの謎を丁寧に解いていく


 「イスラム国」は、西側世界にとっては、本書のタイトル通りまさに衝撃であり脅威である。なにしろ謎が多い。しかも残虐性をあからさまにし、その上世界征服を企むかのような論を展開している。まるでショッカーである。
 そういうこともあって、「イスラム国」についてはあちこちで語られているが、今後これがどのように展開するかを冷静に分析したものはあまりなかったように思う。本書では、歴史的な観点、イスラーム思想の観点などからイスラーム国(と本書では呼んでいる)を分析し、そのイスラーム国の性格、特徴、今後の予測について語っている。
 イスラーム国は1999年の「タウヒードとジハード団」に端を発し、その後「イラクのアル=カーイダ」、「イラク・ムジャーヒディーン諮問評議会」などと名前と組織を変えながら、現在の形になってくる。大きな特徴は巧妙な広報戦略で、さまざまな演出を駆使してイスラム教徒に語りかける。ときにはドラマチックな演出が盛り込まれた映像をネットで配信して、イスラム原理主義過激派に対して支持を呼びかける。そのせいもあって、世界中にイスラーム国への連帯を表明している勢力が現れている。
 イスラーム国が登場したのは、イラク戦争や「アラブの春」が直接的な原因になっており、イラクとシリアの地に政治的空白地域が生じたためで、それが過激派組織の拡大につながったというのが本書の主張。「アラブの春」で政権が代わった他の国々でも、あるいは内乱状態にあり、イスラーム国のような過激派組織が勢力を伸ばす余地があるというのが著者の主張である。
 イスラーム国が今後どのように展開していくかについても考察があり、一定の勢力を維持し続ける可能性はあるが、世界中に拡大するようなことはないだろうという。だが、政治的空白のためにアラブ各地で、イスラーム国のような過激派組織が勢力を拡大していく可能性はあり、アラブ世界でより混迷度は増すかも知れないというのが著者の主張。非常に密度の濃い本で、随所に渡って丁寧に解説されてはいたが、内容が内容だけに読みづらい箇所も非常に多かった。アラブ世界やイスラム思想に馴染みがないということもその一因である。それでもいたずらに脅威を訴えたりすることもなく、冷静沈着に分析しているのは非常に好感度が高い。良い本であると思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『そして、兄はテロリストになった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イスラム国 テロリストが国家をつくる時(本)』
by chikurinken | 2015-04-27 08:11 |
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