ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『ゆきゆきて、神軍』(映画)

b0189364_8171127.jpgゆきゆきて、神軍
(1987年・疾走プロダクション)
監督:原一男
企画:今村昌平
撮影:原一男
出演:奥崎謙三(ドキュメンタリー)

オクザキ、偽善者を打て!

 自称「神軍平等兵」、奥崎謙三の戦友慰霊の旅に同行するドキュメンタリー。公開当時、非常に話題になり、さまざまな賞を総ナメにした異色ドキュメンタリー。
 「戦友慰霊の旅」と言ってもそこはアナーキストの奥崎氏、終戦3週間後に起こった日本軍による組織的な処刑事件(戦友が殺された)の真相を究明するというのがその主旨で、関係者(かつての上官たち)を訪ねるというものである。
 この奥崎氏、右翼の街宣車のような車に乗り回し街宣活動も行うが、決して右翼ではなく、あくまでもアナーキストである。かつて昭和天皇に向けてパチンコを放ったこともある上、殺人、猥褻図画頒布(ポルノ写真に天皇をコラージュしたものを銀座のデパート屋上から散布)などでも逮捕歴がある(この映画撮影時点で前科三犯)。そんな凶暴な奥崎(見たところ普通のおじさん)が、普通の生活を送っているかつての上官たちのところに赴き、どのようないきさつで処刑が行われたか、それに彼らがどのように加担したか執拗に問い質す。とぼけて何も語ろうとしない上官には暴力も厭わず、あらゆる手を尽くして彼らに真相を語らせようとする。軍人時代は上官にも暴力をふるうような勇ましい男で、警察を呼ぶなら呼んでみろとうそぶく。しかし激しく激昂して手を出すというような感じではなく、少しばかり計画的な要素もあり、非常に聡明な男であるという印象も受ける。また、彼がこういう活動を行う動機も純粋(殺された戦友の慰霊であり、二度とあのような悲劇を繰り返さないため真相を次の世代に伝えるべきというもの)であるため、まったく不快感はなく、むしろ爽快感すら感じる。このような奥崎の魅力がこの映画の魅力にもなっている。「私には暴力しかない」という開き直ったセリフもなかなかうならせる。
 この映画は1982年から撮影が始まったらしいが、公開は1987年で、その間さまざまなことが起こっている。そのため、最後の方はかなり意外な結末を迎える。ナレーションは一切なく、ただ奥崎の後をカメラが追いかけるだけという構成の映画だが、それだけで強烈なインパクトが残る。言ってみればドキュメンタリー中のドキュメンタリーである。2015年現在奥崎はすでに死去しているが、生きていたら今の首相のところに言って、開き直ってすっとぼけるヤローに鉄槌を下してほしいと思わせる。まさに快男児、奥崎の真骨頂であった。
ベルリン国際映画祭カリガリ映画賞、毎日映画コンクール日本映画優秀賞他受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『極私的エロス・恋歌1974(映画)』
竹林軒出張所『全身小説家(映画)』
by chikurinken | 2015-04-22 08:17 | 映画
<< 『冬のライオン』(映画) 『精神』(映画) >>