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竹林軒出張所

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『裸の十九才』(映画)

裸の十九才(1970年・近代映画協会)
監督:新藤兼人
脚本:新藤兼人、松田昭三、関功
出演:原田大二郎、乙羽信子、鳥居恵子、太地喜和子、戸浦六宏、佐藤慶、渡辺文雄、殿山泰司、河原崎長一郎、小松方正

実際の事件をなぞっているが
本質を突くような奥深さはない


『裸の十九才』(映画)_b0189364_822079.jpg 1968年に起きた永山則夫連続射殺事件を題材にした映画。
 一応、事件がモチーフで、主人公の少年も永山がモチーフ(役名は山田道夫)になっているが、だからといってこの事件の本質に向き合い掘り下げるというような側面はない。どちらかというと、猟奇的なこの事件を野次馬的にドラマに仕立てましたという類の映画で、内容的に目を見張るような部分はない。永山の不幸な生い立ちは描かれるが、それについてもなぞっただけという感じ。その生い立ちが事件を引き起こしたという描き方がされているわけでもない。事件自体についてもかなり脚色されていて、あの事件はあくまでも「モチーフ」にすぎないという姿勢が見える。だからあの事件、ひいては永山の思考回路に迫るヒントに……などと思って見るとガッカリする(僕はまあそのクチだが)。
 映画の演出自体も正攻法かつストレートで、わかりやすいのはわかりやすいが、その分少々物足りなく浅さも感じる。演出的な面白さはまったくと言って良いほどない。
 キャストは、新藤兼人の映画ということで乙羽信子が重要な役どころ(山田道夫の母役)で登場。新人の原田大二郎が山田道夫役である。他には村野武範がチョイ役で出演していた他、後に映画監督になる「神山征二郎」の名前もタイトルバックのキャストに出ていた(どこで出ていたかはわからない)。もしかして新藤兼人の助監督をしていたために駆り出されたのか。全般的に俳優陣は豪華で、脇役に名のある人々が登場する。これだけ名優が集まってくるのは、やはり新藤兼人の威光かね。
第7回モスクワ国際映画祭金賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『永山則夫 100時間の告白(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『裁判百年史ものがたり(本)』
竹林軒出張所『竹山ひとり旅(映画)』
竹林軒出張所『北斎漫画(映画)』
竹林軒出張所『墨東綺譚(映画)』
竹林軒出張所『映画女優(映画)』

by chikurinken | 2015-04-06 08:23 | 映画
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