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竹林軒出張所

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『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜』(ドキュメンタリー)

ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜
(2013年・Proaction Film/Ventana Film他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜』(ドキュメンタリー)_b0189364_863482.jpg現実の戦場が目の前に展開

 2011年、アラブの民主化運動がシリアに飛び火し、アサド政権に対する反体制運動が盛り上がりを見せたが、政権側の抵抗は強く、結局内戦状態になる。その状況は今も続いており、あげくにその間隙を縫うように「イスラム国」なる一派がシリア領内でも勢力を広げる有様になっている。
 このドキュメンタリーはシリアの内戦をレポートするもので、反体制運動の拠点の一つ、ホムスがその舞台になる。ホムスで反体制運動のリーダー的な役割を果たしているバセットという若者を追うことで、シリアの現状を世界に知らせようというドキュメンタリーである。
 このドキュメンタリーでは、まず最初に、バセットが主導する2011年の平和的な集会が映し出されるが、その後、それに対する政権側の弾圧と武力攻撃、それに応戦する反体制側の反撃というふうに状況が推移していく。そして状況はその後徐々に悪化し、2013年の時点でホムスは廃墟と化してしまっている。完全に戦場と化してしまった街で、政府軍の攻撃に武器で応戦するバセットたちが映し出されるが、仲間たちは次々に戦死し、バセット自身も足に負傷を負う。
 そんな状況になっても立ち向かい続けるバセットをカメラは捉え続けるが、そのバセットがその後どうなったかは、このドキュメンタリーからはわからない。内戦で悪化する街とすさんでいく人々の心だけが淡々と映像で映し出されていく。戦場の様子がこれでもかと示され、他ではなかなかお目にかかれない貴重な映像がふんだんに出てくるが、見ているこちらも殺伐としてくるような虚しい状況が目の前で展開される。作り物ではない現実がそこにあり、映像の持つ力をあらためて知らしめるドキュメンタリーである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『映像記録 市民が見つめたシリアの1年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-02-07 08:15 | ドキュメンタリー
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