追跡「イスラム国」(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル
謎に満ちた「イスラム国」の姿に迫る 国家樹立を宣言した「イスラム国」であるが、恐怖政治で住民を恐怖に陥れながら、他方で外国人ジャーナリストらを残虐な方法で殺害していく。一方で世界中から多くのシンパ戦闘員を引き寄せているという側面も持ち合わせている。暴力と洗脳を繰り返す「ショッカー」や「オウム真理教」のような謎の組織、それが「イスラム国」のイメージ。僕自身は、基本的にアフガニスタンを支配していたタリバンと似たようなものと認識しているんだが、姿がなかなか見えてこない。
その「イスラム国」に迫るドキュメンタリーが、日本人人質が殺害されたまさにその日に放送された。多くの日本人が「イスラム国」に関心を持っている今こそ、その真の姿を知らせるべきで、タイミングとしてはベストである(最初の予定より1週間繰り上げての放送のようだ)。
このドキュメンタリーでは、「イスラム国」の成立、手法、行政組織、資金源、支配領域など多岐に渡って報告するが、同時に関係者に対してもインタビューを敢行しており、「イスラム国」の姿をあぶり出そうという姿勢が見受けられる。中でも「イスラム国」の支配地域から逃れた人々へのインタビュー、「イスラム国」に皆殺しにされた部族の族長のインタビューなどは、よくこんなインタビューが撮れたなというレベルである。
また映像についても、「イスラム国」占領地域での集会の様子や「イスラム国」代表と地元部族との会合の様子など、「イスラム国」内部の貴重なものが出てきた。これでもかこれでもかと繰り出される貴重映像の数々は、NHKの取材力をあらためて知らしめる上で十分。「イスラム国」を俯瞰できるような構成もすばらしい。別の局で放送されている他の「イスラム国」関連の番組をはるかに凌駕する会心のドキュメンタリーである。
★★★★参考:
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『IS 狂気の内幕(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像記録 市民が見つめたシリアの1年(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『イスラーム国の衝撃(本)』竹林軒出張所『イスラム国 テロリストが国家をつくる時(本)』竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』