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竹林軒出張所

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『京都御所』(ドキュメンタリー)

京都御所 〜秘められた千年の美〜
(2014年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

正月は伝統美術の番組がふさわしい

『京都御所』(ドキュメンタリー)_b0189364_8153012.jpg 元旦にNHKで放送されたお正月ドキュメンタリー。昨年放送された『ザ・プレミアム よみがえる江戸城』と同じような趣向の正月らしいドキュメンタリーだが、『江戸城』が冗長なバラエティ番組になってしまっていたのと対照的に、この『京都御所』はキリリと引き締まったドキュメンタリーになっている。
 基本的には、歴代天皇の政務所兼居住所であった京都御所の内部を紹介していく番組だが、本邦初公開という映像も多数ある。そういう意味でも貴重なアーカイブ映像になるが、さらに言えば高精細の4K映像で撮影されたんだそうだ。うちのアナログテレビで見る分にはまったく関係ないが、アーカイブ資料として考えればこういう配慮は非常に重要と言える。
 京都御所にあるさまざまな建物や美術品が紹介されるのは当然だが、それ以外に襖の下地に使われている和紙や檜皮葺など、伝統技術の観点からの映像もあり、番組に奥深さを加えている。ただし冒頭で少しだけ出てきた壁塗りの映像が本編中にはまったく出てこなかった。おそらくBSプレミアムか何かで放送される90分ないしは120分バージョンには出てくるんだろう。もちろん90分/120分バージョンが作られるかどうかはわからないが、今までのいきさつ(『京都 冷泉家の八百年』『中国・雲南 竹とともに生きる』など)から考えるとその可能性は大いにある。
 全体的によくできた番組だったが、難点としては、紹介される建物が御所のどの位置にあるかがわかりにくかった点(僕は手持ちのパンフレットに載っている見取り図で確認しながら見た)と京都御所の歴史についての解説が少々もの足りなかった点が挙げられる。特に今の京都御所の規模が平安遷都から一定だったのか(あるいはいつ頃から今の規模になったか)とか、現在の京都御苑がどのように変遷したかとか、さまざまな疑問が番組を見るうちに出てきたので、そのあたりの説明があればもっと良くなっていたと思う。いずれにしても、歴史的な存在が時代の変遷に応じてその立ち位置を変えていくのは当然で、時代の流れに応じてどう変わってきたかという部分が、こういう類のドキュメンタリーでは重要な要素になると思う。だからこそ、そのあたりにスポットを当ててほしかったわけだ。たとえば、応仁の乱の直後、天皇家が財政難に陥って近所の市民が援助のために食べ物を持ち込んでいたなどという話が紹介されていたが、この辺は非常に興味深い部分である。天皇家でさえこのように時代に翻弄されてきたわけで、そうすると京都御所にも今の姿からは想像できない歴史というものがあったはずで、どのような変遷を経て今の姿に落ち着いたかというのは当然興味の対象になる。時間の制約があったためにこのあたりは仕方がなかったのかも知れないが、120分バージョンでそのあたりの部分が改善されることを望みたいところだ(繰り返すが、そういうバージョンが出るかどうかはわからない)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『よみがえる江戸城(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都 冷泉家の八百年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平安京はいらなかった(本)』
竹林軒出張所『雲南 竹とともに生きる(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-01-06 08:16 | ドキュメンタリー
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