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竹林軒出張所

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『カラーでよみがえる東京』(ドキュメンタリー)

カラーでよみがえる東京 〜不死鳥都市の100年〜
(2014年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

見所が多いドキュメンタリー
好演出が光る


『カラーでよみがえる東京』(ドキュメンタリー)_b0189364_811262.jpg 『カラーでよみがえる第一次世界大戦』『ヒトラー 権力掌握への道』と同じような企画で、要するに過去のモノクロ映像をカラー化して、現代的なリアリティを持たせようという試みである。今回カラー化されたのは、明治末期から1960年代に至る東京の映像で、関東大震災や東京大空襲の映像が、カラー化でよりリアルな質感に生まれ変わっている。
 今回の企画では、おおむね時系列に従って映像が紹介されているため、東京が関東大震災と東京大空襲という二度の災禍に遭い、そこからいかにして復興していったか、その過程が見て取れる。また、大正、昭和初期のリベラルな空気が、やがて戦争の暗い空気に覆われていく過程まで見えてくるような演出も凝っていて、なかなか奮っている。
 たとえば、1943年に明治神宮外苑競技場(現在の国立競技場)で行われた出陣学徒壮行会の映像などもカラー化されており当時の暗い世相が身近に感じられる。一方でその21年後に同じ場所で行われた東京オリンピック開会式の映像は、学徒出陣式と好対照をなしており、それを対比させて提示した演出も見事である。しかもその両方に立ち会ったという杉本苑子の手記まで紹介され、彼女の複雑な心境が示されるという凝りようである。わずか20年の間に、状況がこれだけ大きく変わったのをリアルな映像で目にすると、時代の変化が激烈であったことがわかる。同時に平和の大切さがあらためて感じられるというものである。
 また、江戸の面影を残す明治時代の東京のカラー映像も非常に印象的だった。街の様子が関東大震災、東京オリンピックを節目に大きく変貌していって、江戸情緒が一挙に失われていく様が見て取れる。「逝きし世の面影」がこうして逝ってしまったのかというのがよくわかった。それにしても、このドキュメンタリーで示された江戸の面影は魅力的で、当時来日した外国人の印象を、現代人の我々も共有できるような気さえした。失われたものの貴重さに、100年以上経った今になってやっと気付くというのもはなはだなげかわしいものである。そういう意味で、日本人は自らのアホさ加減を実感しなければならない。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえる第一次世界大戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『戦後ゼロ年 東京ブラックホール(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドラマ 東京裁判 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ヒトラー 権力掌握への道 前後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『終戦直後の日本(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『戦前・戦争(本)』
竹林軒出張所『色づくQ』
竹林軒出張所『地獄門 デジタル・リマスター版(映画)』
竹林軒出張所『過ぎし江戸の面影(本)』
by chikurinken | 2014-10-27 08:12 | ドキュメンタリー
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