盆栽の誕生
依田徹著
大修館書店
盆栽の門外漢にはつらい本
今やヨーロッパでも絶大な人気を誇る(らしい)盆栽。日本での人気の凋落と好対照をなしており、なんだか不思議な感じもする。
ワールドワイドになったと言ってよいその盆栽だが、古来から日本に根付いている趣味かと思いきや、日本で人気が出たのは意外に新しいらしい、本書によると。盆栽の原形は平安時代からあった(鉢木や盆山)が、現在のような形になったのは江戸期で、明治期になってからスタイルの変化を経ながら、今の形に落ち着いた。明治期は特に、上流階級の趣味として花開いたという(政財界で流行したらしい)。
こういった歴史を時系列で記述し、同時に盆栽の飾り方や器の変遷などについても丁寧に説明していくのがこの本。興味深い内容が続くが、扱われている内容が割に細かく、ともすればまったく知らない登場人物が次々に出続けるなど、読むのに少し苦労する。
もう少しこうしたらよいというような提案はまったくないが、まことに読みづらい本であることには違いない。あえて言うなら、全体の流れを完結にまとめた記述が最初にあってもよかったかなとは思う。それから図版が少なかったのもわかりにくさに拍車をかけていた。写真がふんだんにあったらもっとよかったなと思う。また、世界の盆栽事情も紹介されていたらもっと面白くなったかも知れない(こうして挙げてみると提案めいたものも結構あった)。そういう点を考えあわせると、やはりこれは盆栽愛好家のための本なのかなと思う。僕のような盆栽の門外漢には少々つらい本であった。
★★★