モンスターウーマン 「性」に翻弄される女たち
大場真代著
宝島社新書
思春期の高校生向けなのか、
この本は
「セックスに翻弄され、闇を抱えている女性」のことを著者は「モンスターウーマン」と名付けている。なんで「モンスター」なのかわからないが、要はセックスに問題(?)を抱えている女性のことらしい。
そういった女性に多数取材して、彼女たちの事例を紹介していくというのがこの本(「インタビュー+ルポルタージュ」みたいな本)で、扱いは全体的に雑誌感覚である。取り上げられているのは、セックスレスで悩んでいる既婚女性、セフレと楽しい性生活にいそしんでいる既婚女性、数百人と関係を持ったという女性や、いつまでも処女を捨てられない女性などで、取り立てて目新しいものはない。つまらなくはないが、だからどうしたという類の話が多い。性に多大な関心を抱く思春期の子どもたちならいざ知らず、いい大人は、性関係の話がたくさん出て来たからと言ってそれだけで食いついたりはしない。そのため、読んでも大した感慨はない。せめて、亀山早苗(以下参照)の著書みたいに、著者の明確な一貫した主張みたいなものがあればもう少しインパクトのある本になったかも知れないが、そういう要素もない。いろいろな事例について女性の「闇」として扱っているが、そもそもこれが闇と言えるようなものなのか、その辺から検証が必要なような気もする。それから、「セフレ」だの「ヤリマン」だの使っている用語が下品なのもちょっとイヤ。
★★★
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以下、以前のブログで紹介した亀山早苗の著書についての評(再録)。
(旧ブログ2005年7月30日の記事より)
夫の不倫で苦しむ妻たち
亀山早苗著
新潮文庫
面白い恋愛小説はないかと探したがろくなものが見つけらなかったのでこれを読んでみた。が、非常に面白かった、恋愛モノとして読んでみても……。そんじょそこいらの恋愛小説よりはるかに内容が濃く、いろいろなケースが出てくるのでオムニバスのフィクションとして楽しむこともできる(当事者は大変だろうが)。そしていろいろ考えさせられる。
人間は地を這いながら(動物的に)生きているんだなあ、と改めて実感……
★★★☆
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(旧ブログ2005年8月3日の記事より)
「妻とはできない」こと
亀山早苗著
WAVE文庫
「夫の不倫で苦しむ妻たち」の作者による「不倫三部作」の続編。
タイトルが非常に良い。妻とはできないこと……か。考えるね。表紙もかなり刺激的(下品なところがちょっと嫌。個人的には)。
家庭がありながら外で恋愛を楽しんでいる男性たちの告白集だが、相変わらず、身勝手な理屈を並べ立てている。嫁に甘えすぎなんじゃないの。これじゃあ大きな子供だよ。
基本的に不倫や浮気に対して嫌悪感もないし本人の自由だと思うが、周りに不幸をまき散らすのはどんなものかと思う(この本に出てくる人たちは、自分が同じことをされたときにどう思うんだろうかね)。
内容は読みやすく、ちょっとポルノめいたところもあってなかなか面白かった。
特に面白いエピソードがあった。ある女性と不倫している既婚の男(塚本さん)が、妻にばれないよう細心の注意を払っていたが、あるとき、
「三月の半ばくらいだったかなあ、新聞に桜の開花予想が出ていて、ふっと『今年は桜が早そうだなあ』と言ったんですよ。そうしたら妻が不審そうなまなざしを投げてきた。『なに?』と聞いたら、『結婚して初めてだわ。あなたが桜の開花予想について話すなんて』と。『そんなことないよ、会社では花見に行くし』とあわてて言ったんです。でも妻というのは鋭いですね。『あなたはいつも桜が咲いたというニュースを聞いたとき、おう、もう咲いたのかって言ってるのよ。開花予想を気にしたことなんてないわ』と。驚くと同時に心臓がばくばくしました。妻をなめたら痛い目にあうぞ、と思いましたね」
その後も(細心の注意を払いながら)女性と不倫を続けていたが、あるとき、女性のマンションから帰ろうとしたら、そのマンションの前に妻が立っていたらしい。恐るべし、塚本さんの奥方。
★★★☆
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(旧ブログ2005年8月7日の記事より)
「夫とはできない」こと
亀山早苗著
WAVE文庫
もう不倫本はいいやと思いながらも、また借りてきて読んでしまった。亀山早苗の不倫シリーズ5作目(になるんでしょうか?)。
著者は「不倫を勧めはしないけれど否定もしない」という立場をすべての著作で貫いており、読者に判断や評価をゆだねている。どのインタビュイーに対しても共感を持って話を聞いているため、話す方もあれやこれやと何でも率直に話している。だから余計、話が面白い。
いろいろ考えさせられ、しかも読みやすい好著である。インタビューで本をまとめるときはこういう風にするんだよってことだ。最後に面白いフレーズを1つ紹介しておく。
「たとえば妻が浮気したとわかったとき、男たちは、女性が夫に浮気されたときと同様、プライドを踏みにじられたような気分になる。女性の場合は、「私というものがありながら」という怒りがわく。ところが、男性の場合は、「オレが男としてダメなんだ」と落ち込む方向にいく。」
★★★☆
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(旧ブログ2005年8月14日の記事より)
不倫の恋で苦しむ女たち
亀山早苗著
WAVE出版
亀山早苗の不倫シリーズの1冊。
これまで読んだ同じ著者の他の本が、不倫を恋の一形態として描いていたのに対し、この本では、男と女の立場の違いがあるのだろうか、暗黒面を描いている。ダークサイドに陥ったら戻ってこれなくなるような、ともかくとっても暗い。不倫なんてしょせんそんなもんなんだろう。普通に考えりゃね、そりゃそうだろう。まあ自分としては、このシリーズはこの本で打ち止めだな。でも、この著者はなかなか侮れない。うまい書き手だし、どの本も面白く、考えさせられることが多かった。
★★★