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竹林軒出張所

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『しらずしらず』(本)

しらずしらず あなたの9割を支配する「無意識」を科学する
レナード・ムロディナウ著、水谷淳訳
ダイヤモンド社

『しらずしらず』(本)_b0189364_729350.jpg冗長です、ムロディナウさん

 『たまたま』の著者、レナード・ムロディナウの続編と言っても良い著作だが、期待外れだった。本書は、人間の中の無意識や偏見について、社会的なものと個人的なものに分けて解説していくんだが、とにかく記述が非常に冗長で、その割には結論がどうと言うことがなかったりして、読んでいて疲労感を感じる。それに加えて、翻訳がまた読みづらく、その傾向にいっそう拍車をかけている。本書は専門的な本ではなく、言ってみればエッセイの延長みたいなものなんだから、もっと読みやすくする努力が欲しかった。もう少し読みやすい日本語であればまた印象も変わっていたかも知れない。ちなみに著者は物理学者で、本書の内容は認知心理学、神経学、「社会神経科学」などに関わるものである。
 内容を具体的に挙げると、人間が名前や印象で対象を無意識に選別するということ(第1章)、五感以外の感覚(つまり無意識に相当するもの)の存在の可能性(第2章)、意識、無意識による知覚や記憶の修正(第3章)(以上が個人的な無意識)、個人の感情が表情などを通じて他者に伝わるということ(第5章)、見た目が人に及ぼす影響(第6章)、誰にも存在する固定観念(第7章)、帰属意識についての考察(第8章)、感情が感覚や環境によって作られるということ(第9章)、人間が自分を正当化し自分を過大に評価するということ(第10章)(以上が社会的な無意識)など。それぞれの章では、おおむねこういった内容を軸にしていろいろな実験データを挙げたりして述べていくんだが、ともかくとりとめがなく、必ずしもテーマに沿って書かれているわけではない。そのため、読んでいる自分が今どの位置に置かれているのかわからなくなることが多い。したがって、上のようにそれぞれの章を一定のテーマでくくってまとめても、これが内容を正確に反映していないかも知れない。なんとなくこういうことについて書いていたなという、その程度の印象である。いずれにしても、もう少し内容を整理してから発表していれば、もっと内容の濃い本になっていたかも知れない。「冗長で薄い」という印象が一番強く残った。
★★★

参考:
竹林軒出張所『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する(本)』
by chikurinken | 2014-10-06 07:30 |
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