カラーでよみがえる第一次世界大戦(2013年・独ZDF)
第1回 人間性の喪失
第2回 際限なき殺戮
最終回 総力戦の結末
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
第一次大戦には
まだかろうじて人間性が残っていた 第一次世界大戦の当事国ドイツで作られた、第一次大戦を振り返るドキュメンタリー・シリーズ。目玉は当時のモノクロ映像を地道な作業によりカラー化したという点である。
1914年のサラエボ事件を発端として、オーストリアがセルビアに宣戦布告する。これに伴って、スラブの守護者を任じていたロシアがセルビアに味方し、ドイツもこれに応じて(対露)参戦することになる。ロシアと協商関係を結び、アルザス・ロレーヌ地方のドイツからの奪還に燃えていたフランスも(対独)参戦、こうして戦争は多くの国を巻き込むことになった。
ドイツは、短期決戦で片が付くと踏んでおり、フランスに侵攻して電撃的勝利を勝ち取ったあかつきに停戦に持ち込むという作戦を採った。その際、フランス軍の背後に回り込むために中立国ベルギーを通過したが、当然ベルギーの反発に遭い、ベルギーの国内でも戦闘が起こる。そしてこれに反発したイギリスもドイツに宣戦布告することで、戦争の規模が拡大していった。
ドイツは当初勝利を続けたが、目論見どおり戦争が短期で収束することはなく、それどころか近代兵器や塹壕の採用のために、戦闘は従来とは大きく変貌し、大量殺戮が可能な、残虐な総力戦の様相を呈するようになった。戦争は長期化し、一方で各国の経済は疲弊する。結果的にドイツ、オーストリア=ハンガリー、トルコらの同盟国軍は敗北し、ドイツ、オーストリア、トルコ、ロシアで帝政が崩壊するという結末になる。この戦争に関与した当事国の国民は、このような戦争を二度と起こしてはならないと決意していたにもかかわらず、やがては第二次世界大戦という形で再発することになる。
第一次大戦には、第二次大戦の中心人物であるヒトラー、ドゴール、パットン、モーデルらも参加しているなど、さまざまな面で第二次大戦は第一次大戦の後半戦という見方をすることができると言う、このドキュメンタリーによると。
先ほども言ったように、このドキュメンタリーは基本的にカラー化された当時のモノクロ映像がメインになっており、それにちょとした再現VTRを混ぜ、第一次大戦を解説していくという展開になっている。ドイツで作られたドキュメンタリーだけに、ドイツ側からの視点が新鮮である。また、カラー化したことで、古い映像が、過去のものという殻を破って非常に身近なものとして再現されているため、近代戦の残虐性があぶり出される結果になっている。この辺は大いに評価すべき点である。
また、1914年の独英間の自主的クリスマス休戦などにも触れられていて、人間を疎外する戦争中であるにもかかわらず、戦闘員の人間性を感じさせるような描写もあって、一服の清涼剤になっている。善悪の視点からではなく、歴史として客観的に捉えようとする姿勢も共感が持てる。
なお、同様のカラー化プロジェクトは現在も進行中で、今後も同じシリーズで放送される予定らしい。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『戦車の時代がやって来た(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『大いなる幻影(映画)』竹林軒出張所『間諜X27(映画)』竹林軒出張所『黒い鷲(本)』