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竹林軒出張所

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『大いなる幻影』(映画)

b0189364_89071.jpg大いなる幻影(1937年・仏)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
出演:ジャン・ギャバン、ピエール・フレネー、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ディタ・パルロ

三者三様の戦争

 監督のジャン・ルノワールは、印象派の画家、オーギュスト・ルノワールの子ども(そのためジャンの子ども時代の絵もある)。フランス映画界では巨匠で、僕は『ゲームの規則』『ピクニック』などの作品をこれまで見ているが、あまり強い印象はない。この『大いなる幻影』も20年以上前に自主上映会で見たが、あまり印象に残っていなかった。特に前見たときは期待が大きかったためもあり、かえって失望の方が大きかった。
 今回、そのときに比べて冷静な状態で見たためか、前見たときよりも印象は格段に良い。第一次大戦時の西ヨーロッパ社会のありようみたいなものが浮き彫りになっていて、それもなかなか興味深かった。
 ストーリーは、ドイツの捕虜になったフランス兵の話だが、彼らが送られる捕虜収容所は第二次大戦のときと比べて格段に待遇が良い。しかも捕虜収容所のドイツ人の責任者が貴族出身ということもあり、貴族出身の一人のフランス人将校を優遇し、歓待したりまでする。(消えゆく)貴族同士の共感みたいなものがあるわけだ。一方で、一般(庶民階級)の将校にとっても、同じ国の将校でありながら、彼ら貴族将校との間に壁を感じていたりして、必ずしも国と国だけの諍いで終わらない側面があってなかなか複雑である。また、捕虜の中には、自由を求めて命がけの脱走を願う兵士もいる。彼らの群像を描くことで、戦争がさまざまな人々にさまざまな影を落としていることが描き出されていく。後半部ではドイツの市民に対しても戦争が悲劇をもたらしている状況が描かれ、それぞれが三者三様、戦争によって不自由を背負い込んでいる。もっともこういうことが声高に叫ばれるような映画でもなく、話は全体的に淡々と進む。ただこういうエピソードが経時的につながれていくため、なんとなく中心線を欠いている印象で、やや統一感に欠けるストーリーになってしまっているのが残念。
 この映画で一番印象深かったのは、捕虜収容所内での騎士道精神であり、本当に第一次大戦時にこういうことが行われていたかはわからないが、第二次大戦時の日独の収容所の印象が強いため(映像で見たものがほとんどだが)、にわかに信じられないような部分もある。しかもそういう映画が第二次大戦の直前に作られていることも興味深い。このストーリーがまったくの作り物か、それとも似たような話が実際にあったのかはわからないが、全体を貫くヒューマニズムが面はゆいような心地良いような「印象」が残った。やはり印象派画家の末裔の監督だけのことはある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ピクニック(映画)』
竹林軒出張所『ゲームの規則(映画)』
竹林軒出張所『ヘッドライト(映画)』

by chikurinken | 2014-03-04 08:09 | 映画
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