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竹林軒出張所

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『漫画・日本霊異記』(本)

漫画・日本霊異記
ichida著
メディアファクトリー新書

異色の『霊異記』はなかなか秀逸

『漫画・日本霊異記』(本)_b0189364_8202742.jpg 『コミックストーリー 日本霊異記』と同様、これも『日本霊異記』をマンガ化したもの。『日本霊異記』は日本で最初の説話集ではあるが、『今昔物語』や『宇治拾遺物語』ほど有名ではない。だがしかし怪異な話が多いためか、マンガだけでなく翻案本も多いようだ。その中でもこの本はなかなかユニークで異色。
 マンガ化しているのはichidaって人で、『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』『うちの会社ブラック企業ですかね?』などのマンガで最近名前が出ている。絵はプリミティブでよくありがちなマンガではあるが、間が非常に良く(この表現、ちょっとわかりにくいかも知れないが)とぼけた味が全編漂っていて、『日本霊異記』の翻案本としては最高レベルではないかと思う。
 『日本霊異記』は、先ほども言ったように奇譚の類が多く、仏教色が強い。元々、行基の弟子である景戒という僧が、仏教の教えを広めるために書いたものであるため当然だが、絵が素朴で飄飄としているため、説法臭さはあまり感じない。むしろ話の面白さが強調されていて大変読みやすい。それに閻魔大王が裁判官だったり、念仏が空也像のように仏になっていたり、一休さんのとんちネタが出てきたりで、あちこちにくすぐりがあって楽しめる。
 収録されているのは全部で14話(プラス「序」の1話)で、それぞれのマンガの後に原文が掲載されている。原文は漢文調で比較的わかりやすいが、そのことも今回初めて知った。景戒が出家したいきさつが「序」の段で描かれ、『日本霊異記』の特徴がわかるようになっているのも良い。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『コミックストーリー 日本霊異記(本)』
竹林軒出張所『宇治拾遺物語(本)』
竹林軒出張所『古本説話集(本)』
竹林軒出張所『セクシィ古文(本)』
竹林軒出張所『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。(本)』
竹林軒出張所『あっかんべェ一休(本)』

by chikurinken | 2014-02-25 08:21 |
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