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竹林軒出張所

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『現代語訳 史記』(本)

現代語訳 史記
大木康訳・解説
ちくま新書

『史記』のスーパー・ダイジェスト

『現代語訳 史記』(本)_b0189364_8415866.jpg 中国の古典『史記』から、いくつかの逸話をピックアップしてそれに解説を加えたもので、『史記』のスーパー・ダイジェストと言ってよい。どの話も面白く、これから『史記』を読んでみようかなという人に最適。また解説も必要十分で、背景がよくわかる。
 ピックアップされているエピソードは、古代王朝の尭・舜の話から、有名な項羽と劉邦の覇権争いまで(数は多くないが)多岐に渡る。「本紀」だけでなく「列伝」や「世家」からも話が選ばれていて、『史記』紹介本としてはよくできている。ちなみに「本紀」、「列伝」、「世家」などについての解説もちゃんとある。まったく『史記』を知らない人でも十分楽しめるよう配慮されていると感じる。
 個人的に印象が強かったのは伍子胥(「死者に鞭打った」呉の参謀)や韓信(漢の劉邦に仕えた「国士無双」の士)の話。『史記』には、他にも多くの登場人物が参謀や軍師として活躍するが、あまり良い死に方をした人はいない点で共通する。言ってみれば太く短い生き方の人が多い。あまり人生の参考にはしたくないような話で、第三者的に楽しみたいところだ。また、皇帝に不当な扱いを受けた司馬遷(『史記』の著者)の価値観が強烈に反映されているのも『史記』の面白さにつながっている。基本的には、人の道を大切にした王が繁栄し、人の道に背いた王は落ちぶれるという話が多く、謙譲の美徳が全編を貫いているのも『史記』の特徴である。これを経由してオリジナルの『史記』に挑むのも良いかなと思う。僕が挑むのは、せいぜい横山光輝のマンガくらいのものだと思うが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『史記 (横山光輝版)(本)』
竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 史記(本)』

by chikurinken | 2014-02-21 08:41 |
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