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竹林軒出張所

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『原子力大国 アメリカ』(ドキュメンタリー)

原子力大国 アメリカ
(2012年・米9.14 Pictures)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

『原子力大国 アメリカ』(ドキュメンタリー)_b0189364_8221015.jpg本家アメリカの原子力事情

 これも福島第一原発の事故をうけて作られたドキュメンタリーで、これはアメリカ製。アメリカの原子力事情を紹介する。ちなみに原題は『The Atomic States of America』。なかなかふるっている。
 このドキュメンタリーでも、アメリカの原発史が語られる。そのルーツは原子爆弾開発のためのマンハッタン計画である。第二次大戦終結により核開発の必要性がなくなると、関係者は既得の核兵器研究予算を失わないよう、原子力の平和利用というキャッチフレーズを掲げ、なんとか原子力を他の用途で利用できないか模索し始める。当初は珍奇なアイデアがいろいろ出されたが、発電に利用すればよいのではというアイデアが採用され、原子力発電が始まることになる。
 その後、アイゼンハワー政権によって支持されたこともあり、原子力発電は急拡大を遂げ、全米に原発が作られることになる。だがその後、スリーマイル原発で事故が起こり、コントロールが難しい技術であることが判明すると、原発の拡大は停止する。最近になって地球温暖化の問題にあわせて原発の見直しが進んだが、福島原発事故以降、再び増設に歯止めがかかっているというのが現状である。現在アメリカには100基以上の原発があるが、使用済み燃料の処分法はいまだに確立されておらず、最終処分場がない状態である。
 また、それぞれの原子力施設の放射能管理もずさんなところが多く、環境に放射性物質が垂れ流しになっている箇所もある。番組では、ロングアイランドの原子力施設周辺で異常な病気が多発したケース(その後、放射性物質トリチウムの環境への流出が明らかになる)や、軍の核施設のずさんさが一例として紹介される。
 さらに、大都市ニューヨークから55キロの地点に立つインディアン・ポイント原発は、近くに活断層があることが判明し、しかも製造後40年経っている旧型機であるにもかかわらずさらに20年の継続運転が認可されているという事実が明かされる。マグニチュード7程度の地震により原発事故が起こる可能性がある上、事故が起こると巨大都市ニューヨークに計り知れない影響を及ぼす可能性があるということで、大きな懸念材料になっている。この国もフランスや日本と同じように、大惨事を経験しなければわからないんだろうか。もちろんこういうドキュメンタリーが作られているということは、市民の側にそれなりの危機意識があるということなんだが。いずれにしてもアメリカの場合、大陸的なずさんさがそこここに見受けられ、こんなずさんな方法であんな危険な原子力を管理できるんだろうかとこのドキュメンタリーを見てあらためて不安な気持ちになった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フランス 原子力政策の軌跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-29 08:24 | ドキュメンタリー
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