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竹林軒出張所

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『太平洋ひとりぼっち』(映画)

太平洋ひとりぼっち(1963年・日活)
監督:市川崑
原作:堀江謙一
脚本:和田夏十
音楽:芥川也寸志、武満徹
出演:石原裕次郎、森雅之、田中絹代、浅丘ルリ子、ハナ肇、芦屋雁之助、大坂志郎

「ひとりぼっち」感が実に良い

『太平洋ひとりぼっち』(映画)_b0189364_8155230.jpg 1962年、小型ヨット(「マーメイド号」)で太平洋単独横断を成し遂げた堀江謙一の手記『太平洋ひとりぼっち』を映画化したもの。
 主人公の堀江を演じるのは石原裕次郎。僕自身は俳優としての石原裕次郎をあまり評価していないので、正直この映画にもあまり期待していなかったが、そこはさすがに市川崑。「裕次郎らしさ」(これが嫌なんだ)をあまり出さずうまいことまとめ上げていた。
 話の内容はおおむね想定の範囲内で、嵐に遭ったり浸水に悩まされたりといったストーリーだが、タイトルの『太平洋ひとりぼっち』が示唆するような「ひとりぼっち」感がよく伝わってきた。それにヨットが思いの外小さいことや、エンジンが搭載されていないということ(まあ当たり前だが)も初めて知った。ヨットはほとんどボートに近いレベルである。堀江謙一のことは名前ぐらいしか知らなかったが、映画で航行の状況がよく再現されていたため、彼の成し遂げたことがすごいことだというのもよくわかった。
 父親の森雅之と母親の田中絹代がそれぞれ存在感を見せていたが、妹役の浅丘ルリ子はまったく存在感がなく、正直いてもいなくてもよかったんじゃないかという感じである。浅丘ルリ子であることすら気が付かなかった。
 この映画でなんと言っても出色だったのが武満徹のテーマ曲で、若者の野望や太平洋の孤独感などが音を通じて伝わってくるようだった。終わりの方はちょっと唐突に終わったが、和田夏十の脚本もなかなかうまくまとめられていた。終わった後に爽快感が残るような秀作で、テーマ音楽がいつまでも頭の中を駆け巡っていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『炎上(映画)』
竹林軒出張所『おとうと(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『コン・ティキ(映画)』
竹林軒出張所『黒部の太陽(映画)』

by chikurinken | 2013-12-27 08:17 | 映画
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