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竹林軒出張所

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『小津安二郎・没後50年 隠された視線』(ドキュメンタリー)

小津安二郎・没後50年 隠された視線(2013年・NHK)
NHK-BSプレミアム

小津安二郎の命日に小津のドキュメンタリー
NHKの粋な計らい


b0189364_925341.jpg 小津安二郎の特集番組が、没後ちょうど50年の2013年12月12日にBS-NHKで放送された。NHKもなかなか粋な真似をする。1時間の短いドキュメンタリーだが、小津安二郎の映像美学に迫るというアプローチで、なかなか充実したものになっていた。
 小津安二郎に関わった映画人が出てきて小津安二郎の技法について語るというやり方は、この種の他のドキュメンタリーに共通する手法で登場する人々は小津組で助手を務めた人(篠田正浩や川又昂ら)や元小津担当プロデューサー、それから小津映画に出演した女優(岡田茉莉子、香川京子、司葉子)らである。だが、こういった人々を見るとこういったインタビューを敢行するのもそろそろ限界が近付いているような印象も受ける。というのも、もう皆さん結構なお年で、小津没後50年であることを考えると当然なんだが、これから生き証人たちも少しずつ減っていくのは目に見えている。関係者の方には、いずれ近いうちにまとまった形でこういうドキュメンタリーを作っていただきたいものである。
 例によって小津安二郎の生まれから映画人になるまでは通り一遍に描かれるが、このドキュメンタリーの優れた点は、なんと言っても小津が熱中したという絵作りについて時間を割いているところである。たとえば『東京物語』で、話題に上っている事柄が画面にほとんど出てこない点や、あるいは『お早よう』で、画面内の美的なバランスのためにカットのコンティニュイティ(連続性)が犠牲になっている点など、聞いてみると目からウロコの話しばかりであった。また、カラー映画の画面内で赤を多用しているというのも今までまったく気付かなかったんで新鮮。『秋日和』や『彼岸花』、『秋刀魚の味』の映像が随時紹介されていくんが、確かに赤が随所に散りばめられている。小津自身、赤が好きだったということなんである。このドキュメンタリーで見る限り、この赤も相当鮮明で、どうして今まで気付かなかったか不思議といえば不思議な感じもするんだが、どうやらこの番組で登場した映画は最近リマスターされたもののようで、そのためというのも大きいかも知れない。小津のカラー作品については、(同時期のグラビア雑誌などと同様)色のバランスがやや不自然で、当時の技術では仕方なかったんだろうくらいの印象しかないんだが、この番組で見た映像は鮮明さが際立っているような印象だった。
 おそらくこのリマスター版も近々発売されるか、あるいはNHKで放映されるんじゃないかと思うが、一連の作品をもう一度見たいものであるよなあとあらためて感じた小津の五十周忌になったのだった。
★★★☆

追記:
 今Amazonで調べたら、案の定リマスター版、近々発売になるようだ。『彼岸花』『お早よう』『秋日和』『秋刀魚の味』の4作。ただし今のところ全部ブルーレイ版のみのようで、残念ながら僕は見ることができないのだった。もっともあんな高い値段設定じゃどっちみち買うわけには行かないが。

参考:
竹林軒出張所『秋刀魚の味(映画)』
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえった「東京物語」』
竹林軒出張所『青春放課後(ドラマ)』
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえる名作(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絢爛たる影絵 小津安二郎(本)』
by chikurinken | 2013-12-14 09:03 | ドキュメンタリー
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