ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『十戒』(映画)

十戒(1956年・米)
監督:セシル・B・デミル
脚本:イーニアス・マッケンジー、ジェシー・L・ラスキー・Jr、ジャック・ガリス、フレドリック・M・フランク
出演:チャールトン・ヘストン、ユル・ブリンナー、アン・バクスター、エドワード・G・ロビンソン

スケール感はあるが
映画としては少々物足りない


『十戒』(映画)_b0189364_84455.jpg DVD2枚組、総上映時間232分という超大作ハリウッド映画。原作はもちろん旧約聖書の出エジプト記で、タイトルの『十戒』はモーセがシナイ山で授かる十戒のこと。まあこんなこと言うまでもないだろうが。
 映画は、あの有名な海のシーンに代表されるようにスペクタクルを売りにしたもので、美術も豪華な上、非常に多数のエキストラを動員するなど、スケール感は申し分なし。とは言え、一般的なカットについては舞台劇みたいな演出で、わざとらしいキャストの配置や大げさな台詞回しが結構鼻につく。特撮についても今見るとアラが目立つ。またストーリー自体も、ユダヤ人の危機になるとユダヤの神が助けて、エジプト人に10倍返しを喰らわせるという単純な展開で、さすがに後半は飽きてきた。こういった展開で4時間近く延々と繰り出されると、贅沢感は残るが、まあそれだけみたいな感触も残る。
 それにユダヤの神が非常に利己的なのもなんだか不快である。もちろんストーリーは旧約聖書の記述に忠実にできているんだが、一部のユダヤ人のために、エジプト人はもちろんのこと他のユダヤ人でさえ平気で殺戮していくのは納得がいかないというか、あまり良い気持ちがしない。大魔神みたいなものと考えたら別に気にならないんだが、これが実在する宗教の経典になっているということを考えるとちょっとどうよと思う。
 キャストについては、ユル・ブリンナーが存在感があって良かったが、チャールトン・ヘストンは『ベン・ハー』のときほどの輝きはなく、他もあまりこれはという役者はいなかった。悪い意味での「ハリウッド映画」の枠内にとどまってしまった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ベン・ハー(映画)』
竹林軒出張所『奇跡の丘(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『バラバ(映画)』
竹林軒出張所『クレオパトラ(映画)』
竹林軒出張所『サテリコン(映画)』
竹林軒出張所『エジプト人(映画)』

by chikurinken | 2013-10-30 08:06 | 映画
<< 『漢文の読みかた』(本) 『五番町夕霧楼 (63年版)』... >>