判事よ自らを裁け(1961年・TBS)
演出:大山勝美
原作:土屋隆夫
脚本:山田正弘
音楽:一柳慧
出演:佐分利信、加藤嘉、金子信雄、市原悦子、中村雅子、三宅邦子
放送史の彼方に消え去っていたドラマが甦る 50年以上も前のテレビ創生期のドラマ。この頃のドラマは、生放送部分が混ざっていてフィルム部分と混ぜて放送されていたりするため、映像の形で残っているものは少ない。それを考えると非常に貴重である。今回送された映像の四隅にブラウン管の丸みの跡が付いていたことを考えると、放送時に(誰かが)テレビ放送を8mmフィルムかなんかで撮影したものではないかと推測される。だが、その後おそらくリマスターみたいな作業が行われているようで、画像は非常にきれいである。アーカイブ映像として是非後の世代にも伝えてほしいと思う。
さてドラマの内容だが、裁判官が主人公の法廷もので、しっかりした演出が目を引く。オープニングタイトルも、当時の安部公房映画を思わせるような凝った作りである。冤罪で死刑判決を出した裁判官の逡巡がテーマだが、ストーリーはどこかで聞いたような話……というかおそらく『私は告白する』に材を取ったものではないかと推測される。ちなみに原作は土屋隆夫って人の短編小説である。
ストーリーはどこか作り物的な物足りなさはあるが、ドラマとしてはしっかり作られていて好感が持てる。当時のテレビですでにこれだけのものが作られていたことを考えると、「電気紙芝居」などという映画人による(テレビに対する)あざけりはまったく無知のなせる技であるということがわかる。音楽担当が一柳慧というのもすごい。当時のテレビ界のパワーが推し量れるようである。
なお、今回このドラマを放送したのは、CS(スカパー)のTBSチャンネル2というチャンネルで、最近このチャンネルでは、古典的なドラマを次々に放送している。中にはこのドラマのようにまずお目にかかれないようなものまである。ドラマファンの方は、万難を排して、このチャンネルを(短期間でも良いので)試聴されることをお奨めする。
★★★参考:
竹林軒出張所『マンモスタワー(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 わかれ(ドラマ)』竹林軒出張所『栄光の旗(ドラマ)』竹林軒出張所『十二人の怒れる男(映画)』竹林軒出張所『事件(映画)』