模倣品社会 命を脅かすコピー商品
(2013年・加Tell Tale Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
「安ければそれでいい」が今問われる コピー商品の問題点を真摯に追求するドキュメンタリー。コピー商品と言われて連想するのがブランド品であるが、現在ではブランド品のみならずあらゆるもののコピー商品が作られている。そしてその中には、人命に関わるものが数多くあるというのがこのドキュメンタリーのテーマである。
このドキュメンタリーで取り上げられているケースは、薬、自動車のブレーキ部品、航空機の部品などで、どれも人命に関わるものである。こういったもののコピー品……と言っても機能的には同等の役割を果たさないので、模造品と言った方が正しいかも知れないが、外見だけ同じで中身が違うものが堂々と流通していて、しかも業界の方にも、過度な経費削減でそれを流通させる仕組みがあるというのだ。
たとえば薬は、効かないだけでなく毒物が混ざっているものなどもあり、当然それが原因で毎年死者が出ているらしい。この番組で紹介されていた統計によると、パナマで300人、インドで100人、中国に至っては何と毎年30万人がこういう薬で命を落としているという。こういう薬はネット通販で簡単に入手できるため、ますます流通しやすくなっているというわけ。まるで
『第三の男』の世界である。
また航空機の部品も、使い古しのものに手を入れて流通させる悪徳業者がいて、そういう粗悪模造部品が定期点検の際に航空機や軍用機に使われるケースがあるらしい。過去、不良部品が大事故につながったこともあり、こうなるとコピー商品もシャレで済まないレベルである。
先日も、とある中国人客室乗務員がiPhone用充電器のコピー商品が原因で感電死したという事件が中国で発生したが、あれがまさにこの番組で取り上げられた危険なケースの一例である。普通に考えれば家庭用電源で感電死するなどとは考えにくいが、利益のために安全性を度外視して作られた製品であれば、そういうこともありうるということなのだ。
値段ばかり追求する風潮がコピー商品をはびこらせているのは間違いないが、消費者の側も今一度消費行動について反省すべきときが来ている。安かろう悪かろうの商品は結局のところ高くつくということに、消費者もそろそろ気付かなければならない。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『低価格時代の深層(ドキュメンタリー)』竹林軒『百円ショップを巡りながらこう考えた』竹林軒出張所『遊びの科学(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『第三の男(映画)』竹林軒出張所『アマゾンは詐欺の巣窟』