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竹林軒出張所

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『フィツカラルド』(映画)

『フィツカラルド』(映画)_b0189364_912960.jpgフィツカラルド(1982年・西独)
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
撮影:トーマス・マウホ
出演:クラウス・キンスキー、クラウディア・カルディナーレ、ホセ・レーゴイ、ポール・ヒッチャー

ヘルツォークの奇想天外さに驚愕

 こちらもヴェルナー・ヘルツォークの映画。『アギーレ・神の怒り』同様、オリジナル脚本のようだが、ストーリーのあまりの奇抜さに驚く。ストーリー自体は、これも『アギーレ』同様、練り上げられたプロットなどといったものは無く、どちらかというとストレートで至極単純な展開なんだが、話自体が相当奇想天外。アマゾンの奥地にオペラハウスを作りたいという男の野望が描かれるんだが、そもそもこの設定からして意外にもほどがある。その後も、ヘルツォークの大がかりな仕掛けが次々に繰り出されてくる。映画の展開が非常にゆっくりしているため、奇想天外でありながら不自然な感じはまったくなく、なんだか自分が主人公のフィツカラルドと一緒にそういう奇天烈な世界に連れて行かれているような錯覚さえ受けるほどである。一方でこのゆっくりさが少々いらだちを覚える部分でもある。
 映像はスケールが大きく、よくこんな映画が撮れたなと思うようなものである(これも『アギーレ』と同様)。だが撮影過程で森林破壊もやったようで、いくら撮影とはいえそこまでやって良いのかと感じてしまった。主人公のフィツカラルドは、こちらも少し偏執的な男だが、『アギーレ』ほどは暴走せず、はるかに紳士的な男で、これもクラウス・キンスキーが好演している。『アギーレ』と同じ役者が演じているとは思えないほど、しっかり演じ分けられている。キンスキーはヘルツォーク監督にとって実に厄介な存在だったらしいが、それでも何度も主演として起用している。『アギーレ』とこの『フィツカラルド』を見るとその理由も分かるような気がする。この映画も『アギーレ』同様、ほとんどがロケで、ロケには相当な困難があったんじゃないかと容易に想像できるが、そういう意味でも奇跡的な映画と言って良いのではないかと思う。
1982年カンヌ国際映画祭監督賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『キンスキー、我が最愛の敵(映画)』
竹林軒出張所『アギーレ・神の怒り(映画)』
竹林軒出張所『ノスフェラトゥ(映画)』
竹林軒出張所『コブラ・ヴェルデ(映画)』
竹林軒出張所『小人の饗宴(映画)』
by chikurinken | 2013-05-29 09:11 | 映画
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