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竹林軒出張所

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『CDでわかる ベートーヴェン鍵盤の宇宙』(本)

『CDでわかる ベートーヴェン鍵盤の宇宙』(本)_b0189364_7575237.jpgCDでわかる ベートーヴェン鍵盤の宇宙
仲道郁代編
ナツメ社

楽聖のピアノ曲入門にうってつけ

 ベートーヴェンの楽曲解説を通じてベートーヴェンの人間像に迫ろうというムック本。
 前半部分は、ベートーヴェンのピアノソナタ(第1番、第8番《悲愴》、第14番《月光》、第17番《テンペスト》、第21番《ヴァルトシュタイン》、第23番《熱情》、第26番《告別》、第32番)と「エリーゼのために」の楽曲解説で、楽譜の断片を使って解説する。楽譜の断片には演奏時間も付いていて、付属のCD(仲道郁代の演奏)を利用することで、どの部分がそれに該当するか、僕のような音楽シロートでも特定できるようになっている。音楽的な技巧については実際に自分で演奏しなければなかなかわからない部分があるので、ピアノ演奏できない僕にとっては大変役に立つ。ただし付属のCDに収録されている楽曲は、どの曲も1楽章限定である。そのため、収録されていない他の楽章で該当箇所を調べたければ自分で調達しなければならない。
 後半はベートーヴェンの生涯を簡単に紹介していく。ムック本であるだけに、前後半通じてイラストや写真を駆使していて非常にわかりやすい。ただムック本の限界か、どうしても物足りなさは残る。やはり入門書以上ではない。もっとも読む方も普通、こういう類の本にそれ以上は期待しないものなんだろうとは思う。一方で、ベートーヴェンが使っていたさまざまなピアノ(シュタイン、エラール、シュトライヒャー、ブロードウッド)の特性や、それが楽曲にどう影響を及ぼしたかなどの解説があったのはなかなか気が利いていて良い。ベートーヴェンの時代、ピアノが大きく進化し、しかもベートーヴェン自身、その進化を楽曲に反映させていることを鑑みても、こういったことは非常に重要な要素と言える。願わくばそれぞれの時代のピアノで各楽曲を演奏してCDに収録してほしかったが、それは贅沢というものか。
 なお編著者として仲道郁代の名前が出ているが、実際に記述しているのは、その多くが音大の先生や音楽評論家である。仲道郁代が書いている(話している?)と思われる箇所もあり、写真もたびたび出てくるが、全体の中での割合は小さい。また他にも、同著者編の同様の本でショパンのものもある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ピアノの詩人ショパンのミステリー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ベートーヴェンの使い回し』
by chikurinken | 2013-05-17 07:58 |
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