ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『もうひとつのアメリカ史』(5)〜(7)(ドキュメンタリー)

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史(2012年・米Showtime)
第5回 アイゼンハワーと核兵器
第6回 J.F.ケネディ 〜全面核戦争の瀬戸際〜
第7回 ベトナム戦争 運命の暗転
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_913651.jpgアメリカの「悪の帝国」史

 映画『プラトーン』や『サルバドル』を監督したオリバー・ストーンが、現代アメリカ史を自身の視点で洗い直そうというドキュメンタリー。オリバー・ストーンが作るドキュメンタリーだけに、当然、アメリカ中心の傲慢な歴史観で描かれるわけもなく、アメリカ政府に不信感を抱く人々にも受け入れられる内容になっている。
 第5回から第7回では、第二次大戦後の米ソ冷戦時代、そしてベトナム戦争の敗北までが描かれる。
 1952年、核兵器に対して比較的冷静な目を持っていて市民の人気が高かったアイゼンハワーが大統領に就任したが、やがてCIA長官のダレスなどの反共急進派に取り込まれていき、反共的かつ急進的な政策を採るようになる。一方でソビエトの対米核兵器に恐々として、核兵器開発を積極的に進めていく。こうして米ソ冷戦の基盤ができあがる。
 その後を継いだケネディも、民主的かつ聡明という評判が高かったが、反共急進派や軍部の暴走を許すことになり、キューバ危機を招くことになる(キューバ危機のもう一方の当事者であるソ連のフルシチョフも、反スターリンを掲げるような穏健で平和主義的な人物だったというのも皮肉な話である)。キューバ危機は、米国の反共主義者達の思惑とは別に、フルシチョフとケネディのギリギリの努力で間一髪で回避される。しかし局面で見ると一触即発の場面もあり『博士の異常な愛情』のような状況も起こり得たということが訴えられる。
b0189364_922557.jpg ケネディはベトナムからの撤退も公言していたが、1964年に暗殺され、後を継いだジョンソンはこれを完全に反故にしてしまう。ベトナム戦争はその後泥沼化し、結局73年に米軍が敗北し撤退、その2年後に統一されることになる。このジョンソン時代、そしてその後のニクソン時代は、ベトナムだけでなく、中南米でも民主政府を転覆させ、軍事政権を打ち立てるという「反革命の輸出」を積極的に行っている。まさにアメリカが大暴走していた時代で、国内的にはケネディ大統領、マーティン・ルーサー・キング、ケネディ上院議員らが立て続けに暗殺されるという事件が続発した。しかもその犯人周辺についてはいまだに藪の中という有様で、文明国とは思えない状況である。アメリカだけが100年前の帝国主義時代に戻っているかのようで、まさしく時代に逆行している。
 かつてアメリカが「反革命の輸出」を行った国々、ブラジル、チリ、インドネシアは現在では民主化されており、民主化後、経済成長している国もある。こういった国々が真の独立を勝ち取ったという現状は、アメリカの国力、軍事力の衰えを反映しているんだろうと思う。実際、アメリカは21世紀になってもイラクに対して「反革命の輸出」をしているわけで、こうした意図は今でもあるわけだ。ともかく、オリバー・ストーンによってアメリカの悪行が白日の下に曝されるのがこのドキュメンタリーである。紹介される事件は、同時代ということもあり割に知っている事項が多いが、アメリカ現代史と関連付けることで、アメリカ国内の大きな流れ、国際社会の大きな流れが見えてくる。そういう意味でもなかなか意欲的なドキュメンタリーに仕上がっている。なお、第8回から第10回は6月放送予定。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(1)〜(4)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(8)〜(10)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アメリカが見たカストロ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『博士の異常な愛情(映画)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第5集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学(本)』
by chikurinken | 2013-05-13 09:03 | ドキュメンタリー
<< 『面白くってやめられない英語の... 『早春スケッチブック』、『夕暮... >>