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竹林軒出張所

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『原子力“バックエンド”最前線』(ドキュメンタリー)

原子力“バックエンド”最前線 〜イギリスから福島へ〜
(2013年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

もう増設は許されない

『原子力“バックエンド”最前線』(ドキュメンタリー)_b0189364_8354779.jpg 原子力発電で核燃料を反応させた後の核廃棄物の処理を「バックエンド」という。日本では相変わらずバックエンドに真っ正面から取り組もうという機運が見えないが、かつての原子力大国、英国ではすでに大がかりにバックエンドに取り組み、事業を本格化させている。その英国での取り組みをレポートし、福島第一原発の処理の参考として考察しようというドキュメンタリー。
 元々英国でもバックエンドの取り組みはなかなか進まなかったらしいが、20年ほど前から本腰を入れるようになったという。英国では1957年にセラフィールドの各処理施設で火災事故が起こり、スリーマイルクラスのレベル5の核物質放出が起こった。だがその後の処理もおざなりで、ほとんど放置された状態が続いていたという。要は、先送りが限界に達したということなんだろう。
 英国でバックエンド処理の実務を担当しているのは原子力廃止措置機関(Nuclear Decommissioning Authority:NDA)という行政機関で、ここがリードして全国20あまりの原発の廃炉作業に取り組んでいる。中には100年以上の計画で廃炉作業を行っているところもあり、福島原発が30〜40年という楽観的な目標を立てているのとは大違いである。いずれにしても大がかりで大変な作業になるのが核処理であり、相当な長期間に渡って廃炉作業に取り組まなければならないのは言うまでもない。結局のところ発電所建設を上まわる膨大な費用と労力が必要になる。しかもそれは次の世代にすべて託されるというんだから、これほどの利己主義はあるまい。
 とは言うものの、他の国に比べてバックエンド作業が比較的順調に進んでいるのが英国である。だがそれでも、最終処分場はいまだに目途が立っていないという。
 この番組では、英国の比較的進んだバックエンド技術が福島にも役立てられるのではないかという主旨だったんだが、むしろ、バックエンド事業の大変さばかりが伝わってきて、えらいものを背負い込んじゃったなという印象が強かった。日本の場合、原発だけで50基以上あるわけで、しかもそれでも増設しようという勢力がある現状で、まったく恐れ入る。せめて廃炉計画を考えてから建設計画を立ててほしいと思う。「おまえら、ふざけるな。このまま放置したら、どんな事態になるかわかっているはずだ。増設は許されない」というような発言があってもおかしくない。
 いずれにしてもバックエンド事業の現状を詳らかにした貴重なドキュメンタリーになっていた。原子力技術協会の反論が楽しみ(竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』参照)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『旧ソ連 原子力潜水艦の末路(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2013-03-18 08:37 | ドキュメンタリー
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