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竹林軒出張所

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『雲上の超人たち 〜日本アルプス大縦断レース〜』(ドキュメンタリー)

雲上の超人たち 〜日本アルプス大縦断レース〜(2013年・NHK)
NHK-BS1

何も言えねぇ……もう勝手に走ってくれ

b0189364_9302291.jpg 富山湾から駿河湾まで縦断する山岳レース、トランス・ジャパン・アルプス・レースの模様を伝えるドキュメンタリー。昨年NHKスペシャルでも放送された番組(『激走!日本アルプス大縦断』)を100分に再編集したもの。
 このトランス・ジャパン・アルプス・レース、文字通り日本を横断するレースで、富山を出発し、劔岳(いきなり!)に始まって、北アルプス、中央アルプス、南アルプスの山々を縦走して最終的に静岡まで到達する全長415kmのウルトラ・マラソン。全行程8日間で踏破し、途中持参したテントでおのおの勝手に眠るという、過酷にもほどがあるマラソンである。あまりに過酷でしかも相応の登山の知識、経験が問われることから、本レースに先立ってなんと選考会がある。この選考会をパスした28人が2012年の夏、このレースに参加した。
 番組では、各ランナーを追いながら、レースの模様を1本のドキュメンタリーに仕上げているが、やはり特筆すべきはさまざまな映像に迫ったカメラで、何でもこういったレースの経験者数人がカメラマン役を買って出ているらしい。夜間走るランナーもいる上、2日目以降は風雨が強く、カメラマンも参加者に近い条件下で撮影しなければならない。しかもコースの大部分は標高2000m以上の高地である。参加する方も過酷だが、それを追う方も大変だったに違いない。
 雨の中、睡眠時間を削りながら山岳を駆け抜けていくランナーたちだが、途中リタイヤする人が続出し、かれらが選考会を通じて合格してきた人々であることを考えれば、レースの厳しさがわかろうというもの。そういう中で、5日間ちょっとでゴールした消防士が優勝し、その後も参加者達がボロボロになりながら次々にゴールしていく。そして最後にゴールしたのが、チェックポイントの制限時間ぎりぎりで通過していくために「ミスター・ボーダーライン」と呼ばれている人で、見事なペース配分で制限時間30分前にゴールしていった。途中、眠るべきか無理して走り続けるか悩む人がいて、結局無理して走って失敗した人がいたのと対照的で、このミスター・ボーダーラインの冷静さとしたたかさは大したものであった。ちなみに完走者は全部で18人。ある参加者がゴール後、「つらいこともあるがそれを乗り越えると楽しいこともあったりして、人生を凝縮したような7日間だった」と語っていたのが印象的だった。
 僕としては生涯関わり合いになることのないレースだろうが、やはり5日以上睡眠を削りながら走り続けるというのは、競技の性質としてどんなもんだろうかと思う。たとえば、先日やはりNHKで放送されていた「サハラ砂漠マラソン」は毎日コースを区切って(つまりステージを分けて)夜皆同じ場所で睡眠をとるようなシステムにしていたが、こういったステージ制にしたところで過酷さには変わりなく、一方で参加者の安全がある程度確保しやすいというメリットが生じる。このトランス・ジャパンのようにあまりに過酷にしてしまうといずれ死者が出るんじゃないかと余計な心配までしてしまう。特に山岳レースであれば滑落の危険性もある。現にこのレースでもフラフラしながら山道を歩いている参加者もいて、正直、こういうシステムで大丈夫かなと思ったのだった。ま、こんなこと言うこと自体、彼らにとっては余計なお世話で、迷惑なんだろうが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『激走! 富士山一周156キロ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人は走るために生まれた(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『激闘!ドロミテ鉄人レース(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死闘!コスタリカ横断850キロ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-03-06 09:31 | ドキュメンタリー
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