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竹林軒出張所

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『愛の風は風力3』(本)

愛の風は風力3 えぐれ・獅子舞・チェリーです
大橋照子著
祥伝社ノンブック

決して侮れないアイドル本(風)

『愛の風は風力3』(本)_b0189364_20551687.jpg かつて日本短波放送(その後「ラジオたんぱ」→現在「ラジオNIKKEI」)でアイドル的な人気を博した女性アナウンサー、大橋照子の初刊行本。発行は1977年だから、もう35年前ってことになる。
 本のたたずまいはほとんどアイドル本で、グラビアに始まり、エッセイ、ポエム、小説と続く。もっともポエムについてはラジオで『私の書いたポエム』という番組を40年近く前から担当している(今でも存続中)ので、それほど奇異な感じはない。またエッセイについても、当時の日本短波放送での番組について書いたもので、こちらもきわめて自然。小説はちょっと場違いな感じはあるが、内容は自分自身をモデルにしたようなもので、しかもアンブローズ・ビアスの『アウル・クリーク橋の一事件』(竹林軒出張所『ふくろうの河(映画)』参照)を思い出させるような意欲的な作品である。アイドル本(風)だからといって侮れない。
 ただし、大橋照子を知らない人が読んで面白いかどうかは微妙。僕はと言えば、浪人時代、彼女のラジオ番組(『ヤロウどもメロウどもOh!』)を毎回聞いていた(投稿もした)ので、個人的にかなり思い入れがある。この頃の『ヤロウどもメロウどもOh!』(通称『ヤロメロ』)は非常に面白かった。『オールナイトニッポン』とか『パックインミュージック』とかも聞いていたが、そういうのをはるかに凌ぐ面白さだった。といっても、若いリスナーがスタジオに集まって内輪ネタでワイワイやるといった番組で、とりたてて目新しいことはないんだが、やはりパーソナリティを務めていた大橋さん(あえてこう呼ばせてもらう)の魅力だったんだろうと思う。どことなくクラブ活動みたいな雰囲気もあった。
 その大橋さんももう還暦を迎えたし、当時20歳前後だった多くのリスナーもすでに齢50をまわっている。昨年、ヤロメロ35周年記念番組がラジオNIKKEIで放送されたということで、その模様が写真とあわせてネットで公開されているんだが(『大橋照子のヤロメロ35周年記念特別番組』参照)、集まった元リスナーがみんなオヤジなのだ。もう笑ってしまうほど。大橋さんは、もちろんある程度は老けたが、当時とあまり変わらない雰囲気があるんで、オヤジたちに囲まれた様子に余計違和感があった。まあ考えてみれば僕も彼らと同じようなものなんだが、それでもあれだけオヤジばかりが集まると異様と言えば異様だ。でもまあ、公開されている放送音源はなかなか楽しく、当時の空気が甦ってきて懐かしかった。大橋さん、いまでもご活躍だそうで、元1リスナーとしては喜ばしい限りである。この本を買ったのも、ネット上で大橋さんの情報をたまたま見て、懐かしさのあまり著書もついでに買ったといういきさつなんである。もちろん中古本である。実はこの本、昔持っていたんだが、とうに無くしてしまっていた。だから本自体にかなり懐かしさを感じたんである。ただ、今読むと少し気恥ずかしいような部分もあるが、しかし大橋さん、当時からやはり魅力的なお方だなーとあらためて感じた。なお副題の「えぐれ・獅子舞・チェリー」はそれぞれ彼女の当時のニックネームである。
★★★

参考:
『大橋照子のヤロメロ35周年記念特別番組』
竹林軒出張所『「わたし」は「わたし」になっていく(本)』
竹林軒出張所『ふくろうの河(映画)』

by chikurinken | 2013-01-25 08:53 |
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