ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『アジアを狙う国際タバコ産業』(ドキュメンタリー)

アジアを狙う国際タバコ産業(2011年・米Current TV)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー「シリーズ 調査報道」

b0189364_826937.jpg タイトルでわかる通り、タバコ産業がアジアで市場拡大を進めているというドキュメンタリーである。この番組では、インドネシアで現地取材を行い、フィリップモリスなどのタバコ企業がインドネシアでどのように事業を展開しているかを追う。
 タバコ産業は、現在先進国ではなかなか思うように販売できず、売上も落ちている。これは、先進諸国で、健康のためにタバコを控えるよう推進する政策がとられているためで、たとえばニューヨークでは高い税金がかけられていて、タバコ1箱がなんと12ドルもする。そのためタバコ産業は、生き残りをかけて市場を別の国に求めることになるが、現在その中でもっとも力を入れているのがインドネシアである。インドネシアは2億3千万人の人口を抱え、しかもタバコに対する規制はほとんどないと来ている。タバコ産業にとってはパラダイスである。
 少し前に、インドネシアの2歳の幼児がタバコをプカプカ吸う映像がネットで流れ全世界で話題になったらしいが(僕はまったく知らなかったが)、インドネシアの現状を見れば、それすらもあまり珍しくないことがわかる。なんせ子どもたちが街中で普通にタバコを吹かしている。日本の中学生に相当する世代では、4人に1人が喫煙者だという。そもそも子どもの喫煙を取り締まる法律もなく、そのため学校の出入口の横にタバコ販売の露店があったりする。
b0189364_8264854.jpg 一方タバコ産業は、あの手この手でタバコのイメージを向上し、タバコを若年層に浸透させていこうとする。かっこいい男女がタバコを吸うCMをふんだんに流すだけでなく、街中にあらゆるタバコ産業の広告が掲示されている。さらに有名なミュージシャンのコンサートをタバコ産業がバックアップし、タバコのイメージ向上を図るという広告戦略もある。こうして若い世代を取り込んで喫煙者にすることで、死ぬまでタバコを消費してくれるありがたい消費者に仕立て上げようとする寸法だ。
 もちろんこういった野放図な状況に意義を唱える人々もインドネシアにはいる。喫煙が健康に及ぼす影響を指摘し、さまざまな活動をしているNPOや個人もあるが、やはりというか、タバコ産業から相当な嫌がらせや脅迫を受けているらしい。とは言っても、いずれはインドネシアでも喫煙に対する圧力はきっと強くなる。そうするとタバコ産業はまた新たな市場を求めることになるんだろうなと思う。現在、超巨大市場の中国を虎視眈々と狙っているらしい。まったく油断も隙もあったもんじゃない。
 今でこそ日本でも禁煙圧力が強くなっているが、30年くらい前まで、インドネシアほど野放図ではないものの、タバコ広告は雑誌やテレビを覆っていたし、若年層も結構吸っていたように思う。その頃巷で囁かれていたのは、アメリカでタバコが売れなくなったんで日本の市場に進出してきたのだということだ。実際にその頃、アメリカタバコ(いわゆる洋モク)が広く安く売られるようになって、僕もフィリップモリスを吸っていたことがある。ただしタバコは洋モクよりも専売公社のものの方が質が高かったと思う。今、禁煙エリアが増え、子どもへのタバコ販売が厳密に制限されているが、それを思うと隔世の感がある。
 番組ではインドネシアの状況を紹介して、タバコ産業の悪辣なタバコ販売の実態を告発しているが、やや目新しさに欠け、ツッコミも少々もの足りない。そもそもテーマ自体にあまり斬新さがないとも言える。しかしそれなりに見せるドキュメンタリーで、途中でだれることはなかった。
★★★
by chikurinken | 2012-07-07 08:27 | ドキュメンタリー
<< 『ノーマン・ロックウェル アメ... 『オーケストラの少女』(映画) >>