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竹林軒出張所

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『招かれざる客』(映画)

招かれざる客(1967年・米)
監督:スタンリー・クレイマー
脚本:ウィリアム・ローズ
出演:スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートン、セシル・ケラウェイ、ビア・リチャーズ

『招かれざる客』(映画)_b0189364_8363721.jpg 白人の上流家庭で育った娘が、ある日黒人青年を家に連れてきて結婚すると言い出す。周囲の人々は戸惑いつつも、あるいは賛成しあるいは反対するが、同時に自らと向き合い、その思想的背景まで突き詰めざるを得なくなる、といったような話。基本的には実に単純な設定だが、ごく自然に展開していき、話がどんどん膨らんでいく。テーマを膨らませてストーリーに載せていくという作業がうまくいった稀少な例ではないかと思う。
 最初から最後まで三一致の法則(時、場所、出来事)がおおむね守られていて、舞台劇のようでもある。またセリフに重きを置いた展開も舞台劇を彷彿させる。セリフもウィットに富んでいて、しかも登場人物の性格描写が実にうまい。その点『十二人の怒れる男』にも通じる映画で、やはりアメリカ映画の黄金時代に作られた作品はひと味違うと思わせる。演出、脚本、演技とどれをとっても上級のできで、アカデミー賞の各賞の候補にも上がっている(受賞は2部門)。登場人物が皆善良なのも良い。少し気になったのはセットが作り物っぽかったことで、背景が書き割りであるのが明らかで、それが少し雰囲気を損なう結果につながっている。『奥さまは魔女』などの当時のアメリカン・ホームドラマのようなセットで、そのあたりが少々残念なところ。まあそれでも1つの舞台劇として見ればまったく問題ないわけで、それはそれとして良いのではないかとも思う。邦題の『招かれざる客』というのも少し気になるところである。原題は『Guess who's coming to dinner』で、「夕食に呼ぶのは誰」くらいの感じか。こちらの方が軽くてよろしい。
 主演(格)は「花嫁の父」、スペンサー・トレイシーと、その盟友キャサリン・ヘプバーン。シドニー・ポワチエがインテリの医者を静かに演じていてこちらも名演であった。
1967年アカデミー主演女優賞、脚本賞受賞作
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ニュールンベルグ裁判(映画)』
竹林軒出張所『渚にて(映画)』
竹林軒出張所『十二人の怒れる男(映画)』

by chikurinken | 2012-04-13 08:37 | 映画
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