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竹林軒出張所

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『天海祐希 パリと女と』(ドキュメンタリー)

天海祐希 パリと女と… 魅惑の新オルセー 第一部、第二部
(2012年・NHK)
NHK-BS Premium
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 新装なったパリのオルセー美術館を紹介するドキュメンタリー。
 オルセー美術館と言えば印象派の殿堂。元々地下鉄の駅だったオルセー駅を改装したもので、1986年に印象派美術館(ジュ・ド・ポーム)の所蔵品を引き継いで、現在のオルセー美術館となった。数々の有名な印象派絵画を抱える美術館である。一昨年、昨年と日本にも数多くの有名印象派絵画が来たが、今回オルセーの改装のことを知って、オルセー美術館の改装のせいだったのかと納得した。大体有名美術館から有名画が貸し出されて来たり、なんとか美術館展みたいな展覧会が開かれる場合は、その作品を所蔵している美術館の都合が原因になること、特に改装のケースが多いというのはよく知られた事実である。
『天海祐希 パリと女と』(ドキュメンタリー)_b0189364_9192734.jpg それはさておき、このドキュメンタリーは、新装なったオルセーを女優の天海祐希が紹介していくという番組。たとえば外光が取り込まれて自然光が絵画に反映されるようにしたり、壁の色を青紫の暗色にすることで絵画が映えるようにしたりという新しい工夫が紹介される。それだけだと美術館の広報みたいでちょっともの足りなかったのか、絵画にまつわるエピソードを紹介したり、それに関連するパリの施設を訪れたりと、紀行番組的な要素も多く取り込んでいる。そういうこともあって、「天海祐希のオルセーを中心とした紀行番組」と捉えるのが正しく、美術の番組と考えるとちょっと肩すかしを喰らったような感じになるかも知れない。
 番組でモチーフとして使われた絵画は、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」、モネの「日傘をさす女」、ドガの「エトワール」、ベルト・モリゾの「ゆりかご」など。かつての酒場、ムーラン・ド・ラ・ギャレットを天海祐希が訪れたりするのだが、レストランに形を変えて現存しているというのはまったく初耳で新鮮だった(現在は敷地も随分狭くなって、ルノワールの絵のような面影はまったくないが)。また、ベルト・モリゾのエピソードも知らないことが多かったので興味深かった。
 ムーラン・ド・ラ・ギャレットの場面もそうだったが、途中、CGを使って現在の風景をそのまま過去の風景に置き換えるという試み、一種の映像的なお遊びなんだが、それが何度か出てきた。『ブラタモリ』でお馴染みの演出だがもしかしてスタッフが一緒だったのか……。あるいはNHKで今後多用するつもりなのか、その辺はよくわからない。チープな演出と言えば言えるが、『ブラタモリ』よりは、手がかかった高精細なCGだったように思う。
 天海祐希が堂々としている上、振るったコメントも繰り出してくるので、テレビ放送用のプログラムとしては成功していると思うが、全体的にどことなくとりとめのない印象が残った番組であったのも事実である。『ブラタモリ』のオルセー版、『ブラアマミ』になっているように感じたのは僕だけか……。
★★★☆
by chikurinken | 2012-02-29 09:22 | ドキュメンタリー
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