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竹林軒出張所

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輸入CDはウラシマ状態

 最近気が付いたんだが、AmazonでクラシックやジャズのCDがものすごい値段で売られている。以前から廉価版CDというのがあったのはもちろん知っているが、今の状況はちょっと「はんぱねぇ」んである。
b0189364_9595278.jpg たとえばEight Classic Albumsというジャズのシリーズがあるが、4枚組で1100円前後とくる。しかも4枚組ではありながら、その実8枚分のコンテンツが入っているという。どういうことかというと、たとえばジョン・コルトレーンの『Eight Classic Albums』には、『The Last Trane』、『Informal Jazz』、『A Blowin Session』、『Black Pearls』、『Settin The Pace』、『Kenny Burrel And John Coltrane』、『Traneing In』、『All Mornin Long』の8枚分のオリジナル・アルバムが収録されている……4枚のCDに(つまり2枚分のアルバムが1枚のCDに収録)。ということは、計算してみると、元のアルバム1枚当たり110〜140円程度ということになる。レンタルより安い!
 このシリーズだが、コルトレーン以外にも、マイルス・デイヴィス(マイルスは10枚組!)、ソニー・ロリンズスタン・ゲッツなどの有名どころもあるし、今の日本ではあまり多く出回っていないようなアーティストのものもある。収録されているアルバムは、特に有名どころのアーティストについては、割に有名なアルバムが多く、マイルスやロリンズについては、個人的には持っているものばかりなので今さら必要ないが、ちょっとマイナーな線になると興味を引かれるものも多い。そういうわけで、試しにキャノンボール・アダレイのものを買ってみた。このCDもご多分に漏れず8枚分のアルバムが入っているが、そのうち持っているものが1枚あったので新旧で聞き比べてみたが、音質的に特にどうこういうような問題はなかった。思った以上に良いもので、少なくともiTunesやiPodに入れて聞く分にはまったく遜色ないのではないかと思う。
b0189364_1025069.jpg 一方クラシックになると、はんぱなさも桁外れになる。たとえば、CD85枚組のベートーヴェン全集が約6000円(輸入盤であるためか毎日値段は変動している)、170枚組のモーツァルト全集が約1万円、157枚組のバッハ全集が約1万3千円である。こうなると、これまでの常識が通じないというか、もうなんかわけがわからない世界である。ベートーヴェン全集の場合でCD1枚当たり70円程度。レンタルするよりはるかに安いときている。この3つの全集は、オランダにある(という)Brilliant Classicsというレーベルが出しているもので、他のクラシック・レーベルからライセンスを受けて販売する会社らしい。そのためか、ラインアップを見る限り演奏自体は割と有名なアーティスト、アルバムのものが多いのである。こういう商品が起爆材になっているのか、名のある老舗レーベルも、同様の企画を出している。RCAからはまもなくトスカニーニ全集(84枚組、7500円前後)が出るというし、カザルスクライバーも大手レーベルから低価格でボックス・セットが出ている。
 こういうのは大抵が輸入盤だが、こうやって通販で普通に買えるようになると、今までのCDの価格体系というものが劇的に変わるんじゃないかと思う。特に、クラシック、ジャズ、ロックなどの古典再版系のものは、今後、二束三文の値段で売られるようになるかも知れない。古典を安く入手できるのは歓迎ではあるが、果たしてこれでレコード会社がやっていけるのか、共倒れになるような価格設定なんじゃないかと老婆心で心配してしまう。
b0189364_10135178.jpg だがベートーヴェン全集が6000円で手に入るというのも何とも魅力的な話である。少し調べてみると、ベートーヴェンの交響曲全集なんかも千円台から出ている。僕もかつてはせっせといろいろなアーティストのものを買い集めたが、どれも1万円近くしたような記憶がある。ルービンシュタインのショパン曲集もたしか2〜3万円程度で買ったような記憶があるが、今見たら11枚組で2360円だそうな(Chopin Collection)。10分の1の値段ということか……。こういうのは何だか少し複雑な気分になる。
 かつて国内盤CDがやたら高値で売られていたときに、クラシックの輸入盤CDを渋谷の専門店で探し回っていたことがあるが、そのときはせいぜい国内盤の2〜3割引程度の値段だった。それから20年以上経ったが、国内盤は、多少は安くなったとは言え旧態依然の売り方を続けていて、一方で海外盤は、完全に価格体系が変わったかのような値段になっている。しばらく輸入版に頓着していなかった間に時代は大きく動いていたのだろうか。僕はウラシマ状態である。国内メーカーもさすがに今までのような殿さま商売を続けるわけにいかなないだろう。今の時代、渋谷をうろつき回らなくてもネットで簡単に手に入れられるわけで、同じ市場で勝負しなければならないわけだから。少なくともクラシックやジャズなどの古典再版系については今後劇的に変動があるかも知れない。「瞑目して待て」という境地の昨今である。

参考:竹林軒出張所『ウェーバーとバレエ』
   竹林軒出張所『今月のCD カツァリスのベートーヴェン』
   竹林軒出張所『ホグウッドのモーツァルト』
   竹林軒出張所『ベートーヴェンの使い回し』
by chikurinken | 2012-02-22 10:09 | 音楽
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