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竹林軒出張所

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『にっぽん 微笑みの国の物語 前編』(ドキュメンタリー)

にっぽん 微笑みの国の物語
「時代を江戸に巻き戻せば」

(2012年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集

『にっぽん 微笑みの国の物語 前編』(ドキュメンタリー)_b0189364_912075.jpg 明治時代初頭、日本を訪れた英国人女性イザベラ・バードの足跡をたどり、江戸時代の面影を探るドキュメンタリー。
 旅行家、イザベラ・バードは、明治11年に東北から北海道にかけて旅をしており、その様子を『日本奥地紀行』に記している。当時の日本は、ほとんどの地域で江戸時代の生活をそのまま引きずっており、江戸的な要素が残っていた。バードも当初はあまり良い印象を持たなかったようだが、徐々に当時の日本の魅力を見出し「東洋のアルカディア(桃源郷)」と評するまでになっている。特に、民衆の道徳性や勤勉性に感心し、多くを望まず今を生きることに幸せを見出す生き方に共感を覚える。
 このドキュメンタリーでは、バードのたどった地域を紹介し、当時とあまり変わりない風景を映し出して見せる。バードが体感した景観もこういうものだったのだろうと思えるような、美しい映像である。また、バードが当時触れたであろうと思われる習俗もあわせて紹介される。その中で、江戸時代の風習が今も残っている、滋賀県の北内貴という地方の自治組織が詳細に紹介される。ただしこの北内貴の箇所は、面白いには面白いが、少し長すぎる(30分近く割いていた)上、このドキュメンタリーのコンセプトから少し脱線したような印象があった。
 案内役は中村梅雀で、古い劇場の舞台を使って、バードに扮した外国人女優とかけ合ったり、いろいろと趣向を凝らした演出をしていたが、あまり効果的だとも思えない。正直蛇足だったような気もする。もっとシンプルに展開しても良かったと思う。
 アイルランド人でかつてバードを研究していたという若い女性もゲストとして出演し、現場に赴いてバードの旅をたどる役割を果たす。バードが見聞きしたものを実際に体験していくんだが、こちらはバードの「目新しい体験」を追体験できていたようで、番組として割合良い効果を上げていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語 後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒『「ラスト・サムライ」に見る「逝きし世の面影」』

by chikurinken | 2012-02-11 09:02 | ドキュメンタリー
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