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竹林軒出張所

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藍川由美『喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集』(CD)

藍川由美『喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集』
1. 私だけの十字架
2. ああ人生に涙あり
3. 挽歌
4. 氷の花
藍川由美『喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集』(CD)_b0189364_19122475.jpg5. 二人の世界
6. もがり笛
7. 記念樹
8. 五つの歌曲〜春の岬
9. 五つの歌曲〜海の聲
10. 五つの歌曲〜要
11. 五つの歌曲〜月夜
12. 五つの歌曲〜かはら
13. 萩の里の子守歌(遠州の子守歌)
14. 破れ太鼓
15. そばの花咲く
16. 喜びも悲しみも幾歳月
17. 灯を抱く人たち
18. 惜春鳥
19. 十三の砂山
20. ぼくはカリメロ
21. バーバズーのうた
22. 子守歌
23. なな山越えて

 学生の頃、初期の『水戸黄門』の再放送を見ていて、その内容に随分感心したことがある。僕が学生の頃、すでにワンパターンの代表作として世間では低俗ドラマの代表作のように言われていたが、初期のもの、第1シリーズから第4シリーズくらいまではストーリーも脚本もしっかりしていて、決して侮れないなと思った記憶がある。そしてなんと言っても味わい深かったのが、使われていたバックミュージックで、泣かせるシーンで使われるスローテンポの音楽は、それ自体が魅力的であった(「泣き虫」、「男のやさしさ」、「再会幾多の日々」などというタイトルがついた曲。ちなみに水戸黄門のバックミュージックは、現在『水戸黄門サウンドトラック』『水戸黄門 サウンドトラック2』というCDで聴くことができる)。
藍川由美『喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集』(CD)_b0189364_19124852.jpg この曲を作った人が木下忠司という人である。この人、映画監督の木下恵介の弟であり、そのため木下恵介の多くの映画でも音楽を担当している。その関係で、木下恵介アワーなどのテレビ・ドラマでも音楽を数多く作っており、子どもの頃からとてもメロウな気分にさせてくれた『二人の世界』の主題歌もこの人の作品である(竹林軒『遙かなり、木下恵介アワー』を参照)。
 で、この木下忠司の楽曲をピックアップして、楽譜通りに歌おうという試みを、以前紹介した藍川由美(竹林軒出張所『「演歌」のススメ(本)』)がやっている。『喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集』というCDがそれで、水戸黄門の主題歌「ああ人生に涙あり」(!)や「二人の世界」も歌われている。基本的に、クラシックの歌曲風の歌い方で、そういう歌い方が果たしてこういった流行歌調の歌に合うのかはなはだ疑問だったが、聴いてみるとこれが以外にいけるんである。特に「私だけの十字架」(チリアーノって人が歌っている、ドラマ『特捜最前線』のエンディング曲)は、原曲の魅力を余すところなく伝えており、木下忠司の魅力がストレートに伝わってくる。「ぼくはカリメロ」(アニメ『カリメロ』の主題歌)については当初はいかがなものかと思っていたが、童謡みたいな響きで、それほど違和感もない。しかし、このCDに収録されているいろいろな歌を聴くと、歌謡曲風あり、民謡風あり、童謡風ありと曲調もいろいろで、木下忠司という人は実に多才な人のように見受けられる。もっとも、僕個人としては、木下忠司の才能は高く買うが、どの楽曲もなべて好きというわけではない。「破れ太鼓」(同名映画の主題歌)や「そばの花咲く」(『カルメン故郷に帰る』の挿入歌)は、映画を見た際はあまり良い印象を抱いていない。「喜びも悲しみも幾歳月」についてもあまり良い印象を持っていなかったが、藍川由美の歌を聴く限りでは悪くない気もしてきた。ともかくバリエーションが広い作家であり、それを存分に伝えている藍川由美もお見事と言えよう。

参考:
竹林軒出張所『「演歌」のススメ(本)』

by chikurinken | 2012-02-04 19:14 | 音楽
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