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竹林軒出張所

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『夜明けのスキャット』(CD) スキャットで押しまくっちゃいます?

由紀さおり『夜明けのスキャット』
『夜明けのスキャット』(CD) スキャットで押しまくっちゃいます?_b0189364_984387.jpg1. 夜明けのスキャット
2. 女ひとり
3. 男と女のスキャット
4. 私の好きなもの
5. 真昼のデイト
6. 結婚します
7. 天使のスキャット
8. 夜明けのうた
9. タ・ヤ・タン
10. 悲しきハミング
11. 青いスキャット
12. この恋を抱きしめたい
13. バラのためいき【ボーナス曲】
14. 恋心 【ボーナス曲】
15. 恋は水色 【ボーナス曲】
16. 知りたくないの 【ボーナス曲】
17. 白い恋人たち 【ボーナス曲】
18. 男と女 【ボーナス曲】

 由紀さおりが人気だそうで(Asahi.com『由紀さおりさん、欧米で大ブレーク 日本語で歌いヒット』日経トレンディネット『由紀さおりが米国iTunesジャズチャートで1位獲得のワケ』)。ちょっと前から由紀さおりの昔の歌に注目していた僕としては、思わず「どや顔」をしてしまうところである。
『夜明けのスキャット』(CD) スキャットで押しまくっちゃいます?_b0189364_1641359.jpg 元々由紀さおりの歌に注目したのは、原由子のカバーアルバム『東京タムレ』に収録されていた「生きがい」を聴いてからである。由紀さおりは僕の子ども時代からテレビでよく目にしていた歌手なので、もちろんこの歌も知っていたが、こういう大人の歌詞の意味なんか子どもにわかるわけもなく、長年気にも留めないでいた。随分なオッサンになってから原由子の素朴な歌唱を聴いて、なるほどこういう歌詞だったのかとあらためてわかり、オリジナルの歌も聴いてみようと思って聴き始めたのが、僕の「由紀さおりデビュー」である(2003年から2004年頃)。懐かしのシングル曲中心に聴いていたが、あらためてわかったのは決して童謡だけの人ではないということである。初期の曲は特にメロディラインに面白いものが多く(いずみたくの曲が多い)、それを活かす歌唱がまた素晴らしい。かつては『由紀さおり全曲集』みたいなものが毎年のように発売され、ラインアップはどれも似たり寄ったりで、ソフトウェアで言うマイナーバージョンアップな感じで出されていたが、由紀さおり再発見が始まったのか、2008年にデビューアルバム『夜明けのスキャット』、2009年に3枚組の『由紀さおり COMPLETE SINGLE BOX』が出されて、リバイバルブームのまっただ中に入ったか……という思いをしていたところに今回のピンクマルティーニである。
『夜明けのスキャット』(CD) スキャットで押しまくっちゃいます?_b0189364_911252.jpg ピンクマルティーニというのは、僕はまったく知らなかったのだが、アメリカのジャズオーケストラで、その主要メンバーがアルバム『夜明けのスキャット』をジャケ買いしたことがきっかけになったらしい(先の記事によると)。由紀さおり・ピンクマルティーニ名義で発表された『1969』は、「夜明けのスキャット」(とボーナス曲)以外はカバー曲ばかりで、1969年の世界中のヒット曲からピックアップしているらしい。半分は当時ヒットした日本の歌謡曲である。ピンクマルティーニの演奏は、ジャズバンドというより当時の歌謡曲のバックバンドみたいな演奏で、違和感はまったくないが、歌謡曲に慣れた耳にとっては新鮮味もあまりない。選曲はなかなかのもので、演出(セリフが入ったりする)も凝っていて面白い。
 ただ、僕としてはこの『1969』より、由紀さおりの味がよく出ている『夜明けのスキャット』の方を奨めたいと思う。曲のリストを見ていただくとわかるが、これはなんと言ってもスキャットにこだわり抜いたアルバムである。「夜明けのスキャット」、「男と女のスキャット」、「天使のスキャット」、「青いスキャット」と、タイトルに「スキャット」が付く曲が4曲ある他、「私の好きなもの」、「真昼のデイト」、「結婚します」、「この恋を抱きしめたい」も由紀さおり風スキャットが冒頭に入っている(「タ・ヤ・タン」も考えようによってはスキャット)。カバー曲の「女ひとり」と「夜明けのうた」まで冒頭スキャットで歌っている(「シュルルールールルシュールルー」、「ラーラーララーラララー」という具合に)。元のアルバムに入っていた12曲のうち、10曲(考えようによっては+1曲)がスキャット関連で、スキャットで押すにもほどがあるというアルバムである。当時の歌謡曲らしい編曲で、どれもムードミュージックという雰囲気が出ていて、由紀さおりの声や歌い方にもフィットしている。Amazonで試聴できるが、スキャットの部分が結構聴ける。興味のある方はご試聴ください(僕が購入した盤と曲順が違っている)。

参考:
竹林軒出張所『明日へのスキャット(本)』

by chikurinken | 2011-12-17 09:14 | 音楽
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