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竹林軒出張所

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『ネカマ日記 体験!「出会い系サイト」のウラ』(本)

『ネカマ日記 体験!「出会い系サイト」のウラ』(本)_b0189364_7442471.jpgネカマ日記 体験!「出会い系サイト」のウラ
やなせひさし著
宝島社

 出会い系サイトでバイトしたある若者の潜入ルポ……もとい体験記。
 出会い系サイト、知らない人のために説明しておくと、インターネットのサイト上で掲示板みたいなものが用意され、そこに会員がプロフィールを掲示し、それを見て興味を持った人がその人あてにメールを送れるというシステム。その際、メールを送るときにサイトを介在するような方式にすることで、会員のプライバシー(メールアドレスなど)が守られることになる(一方でこのような構造がネカマ・システムの存在を可能にしている)。サイトによって違うが、一般的にメール1通につきいくらというふうに課金される方式になっている。この著者が体験したサイトの場合、女性会員は無料で男性会員はプリペイド式のポイントを使ってメールするようになっているらしい。つまり基本的に男性向けのサービスであり、男性会員にポイントを買い続けさせることで、サイト側は利益を上げることができる。
 そこで登場するのがサクラである。実際には女性会員の方が著しく少なく、男性会員ばかりがあふれるサイトが多いため、それに対応するためサイト側では女性会員のサクラを用意する。こうすることでサイトのシステムが成立するのだが、ここで重要なのは、サクラはなにも女性である必要がないということだ。なにせメールを介在していて顔が見えないから、(直接会わない限り)男でも女になりすましてメールの対応をすることができる。こういうのを「ネット上のオカマ」で「ネカマ」という。著者が潜入(!)したサイトでは、30畳ほどの部屋の中に50台ほどのパソコンが並べられていて、そこでオペレーター(ほとんどが男で一部女)が架空の女性会員になりすまし、男性会員と黙々とメールを続けるというシステムらしい。
 著者もそれに加わって作業し、その経過を報告したのが本書。途中、他のバイト女性とのプチ・ラブロマンスも織り込まれる(このあたりはフィクションかも知れない)が、仕事内容(ネカマ業務)自体は真に迫っており、知らない世界の話ばかりで興味深い。また、だまされている男性会員をあざけるような記述も一切なく(むしろ共感しているようだ)、一生懸命仕事に取り組んでいる様子もうかがわれる。「男が勝手に夢想する女性像」というものがうかがい知れて心理学的に面白い素材だなと思った。なお本書は5年以上前の本で、今もこういうシステムの出会い系サイトがあるかどうかはわからない。
 内容は日記のような平易な記述で非常に読みやすく、200ページ以上あるが2時間くらいで読み終わった。
★★★
by chikurinken | 2011-07-10 07:44 |
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