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竹林軒出張所

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『“マメの木”が森を救う!』(ドキュメンタリー)

“マメの木”が森を救う! 〜焼き畑農業からの脱却〜
(2011年・英Notion Pictures)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー <シリーズ 森に生きる>

『“マメの木”が森を救う!』(ドキュメンタリー)_b0189364_843578.jpg 中米の熱帯雨林地域では、現在さかんに行われている焼き畑農業のために年々かなりの熱帯雨林が失われている。焼き畑農業では、山間の森林を伐採しながら焼き払ってそこを畑として使うのだが、最初の年はある程度の収穫を見込めるがやがて収穫は著しく低下し結局放置され、次の森林が焼かれることになる。放置された畑は多くの場合土壌が浸食され森林として再生されないため、結果的に森林破壊、環境破壊がどんどん拡大していくことになる。
 ある英国人の研究者(マイク・ハンズ氏)が、この焼き畑農業に代わる農法として、アレークロッピングという方法を開発した。この方法はマメ科の樹(インガ)を列上に植えておき、その間で農作物を育てるという方法で、マメ科植物が窒素を固定して肥料にするだけでなく、樹から落ちた葉もそのまま養分として農作物の成長を促すことになる。木々がある程度大きくなったら、地上に光が届くようにするために一定の高さで枝を刈り取るため、燃料として薪を確保することもできる。日本の里山を思い出させるような非常に理に適った方法で、すでにハンズ氏自身の畑でも実証しており、ごく一部に実践者もいる。この方法では、従来のように次々に畑を移動させる必要もなく、固定した一定の土地を畑として毎年利用できるというメリットも生じる。
 一方で問題もある。この農法を中米の農家に広く普及させるには、多くの資金が必要になる。元々ハンズ氏は持ち出しで普及活動をしていたが、資金もすでに底をつきかけているのが現状(本人は残り9000ドルと言っていた)。NGOやホンジュラス政府に働きかけるなどしており、国連でも講演する機会を得たりしているが、なかなか資金提供者は現れない。それでもよりよい世界を作るためにハンズ氏は奔走し続けている。
 このドキュメンタリーで紹介された農法は熱帯雨林焼き畑対策として非常に魅力的であるが、僕はむしろハンズ氏の活動や奔走の方に興味をおぼえた。つまり、1人の研究者が、生活を顧みず夢に向かって邁進し頑張っている姿である。資金が足りずに行き詰まりそうになるが、それでもチャンスは到来し、あるいは実現しあるいは頓挫しながらも少しずつ前進している姿がとてもよい。もっともこのようなドキュメンタリーで取り上げられたことで、資金提供者が現れる可能性も一段と高くなったんではないかとも思う。そういう意味で、この英国の製作局の貢献は、ハンズ氏にとって、そして熱帯雨林にとっても計り知れないものになっている。
★★★☆
by chikurinken | 2011-06-27 08:45 | ドキュメンタリー
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