ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『プルパン 〜あずき菓子はオモニの愛〜』(ドキュメンタリー)

b0189364_12285773.jpgプルパン 〜あずき菓子はオモニの愛〜
(2009年・韓国MBC)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

 とても泣けるドキュメンタリー。
 チェ・ジョンミさん(37歳)には、保育園に通う2人の子供がいる。屋台でプルパン(あずき菓子)を売りながら、2人の子供を自分一人で育てている。いわゆるシングルマザーである。ここらあたりまでは、今ではそれほど珍しくないシングルマザーの苦労譚であるが、「でもただ一つ違っていたのは、オモニ(母)が癌だった」ことである。
 ジョンミさんは数年前に胃がんを患い、胃の摘出手術を受けるも経過は良くなく、やがて癌が全身に転移してしまう。このドキュメンタリーの撮影時点で抗癌剤治療を受けているが、そのために家を空けることも多く、子ども達は週に5日間保育園に滞在している。子ども達のことが心配で少しでも長く生きたいと願い、抗癌剤の副作用にも耐えるジョンミさんであるが、腹水が溜まるなど経過は必ずしも思わしくない。
 2人の子ども達は、母の手を煩わせないようにと、洗い物など自分でできることは自分でやるようになる。特に上の子(ウンソ)が実にけなげで、見るものの心を打つ。ジョンミさんもできる限り母親らしいことをやってあげたいと思うようになり、やがて仕事を辞めて、子ども達の帰りを家で迎える生活になる。こうしてジョンミさんは、幸せを感じながら生きていくのだった。
 ドラマでこういうストーリーのものをやったら、たとえできが良くても「わざとらしい!」とか「子供を使って泣かせるな!」とかいろいろな批判が来そうだが、実話で、しかもドキュメンタリーであるので、そういう批判はまったく当たらない。見るこちら側も、ただただ、子ども達の将来が心配になってくる。それにジョンミさんの無念も伝わってきて、不憫に感じる。しかしそれと同時に、何の足しにもならない(と思われる)摘出手術や抗癌剤治療を当たり前のように施し、患者を苦しめている現代医療に対する不信感も頭をもたげてくるのだ。

追記:このドキュメンタリーの中に、医師が、抗癌剤治療を施した患者の生存期間が治療開始から1年半〜2年と言うシーンがある。実はこれ、ジョンミさんが、つらい抗癌剤治療を1年間続けてやっと終わった時点で医師に訊ねたときに聞く言葉で、その後ジョンミさんは大変なショックを受けてしまう。僕には、抗癌剤治療が何の役にも立たないという意味に聞こえた。
2010年国際エミー賞 最優秀ドキュメンタリー賞受賞作
★★★☆
by chikurinken | 2011-05-20 12:30 | ドキュメンタリー
<< 『地獄門 デジタル・リマスター... 『ふくろうの河』(映画) >>