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竹林軒出張所

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『私は黄砂と闘う』(ドキュメンタリー)

私は黄砂と闘う
(2009年・NHK、MediaCorp)
NHK-BS1

『私は黄砂と闘う』(ドキュメンタリー)_b0189364_8413117.jpg 中国甘粛省、民勤。黄砂の最前線に住むある夫婦の物語。
 彼らが住んでいる村は、毎年のように黄砂の砂嵐で襲われ、村人たちは、彼らを除き皆都市に移住した。
 黄砂に負けないことを誓う夫(魏さん)は、羊を飼い作物を耕しながら(収量は減っている)も、砂嵐の中で懸命に生を維持していく。水も週に1回程度、近郊の村まで1時間かけて汲みに行く。魏さんは元教師でもあり、地元に残された小さな小学校でも教えたいという願望がある。しかしやがてその小学校も廃校になり、町の学校に統合されていく。
 魏さんは、自身の子どもや元村人たちからも移住を勧められるが、それでも首を縦に振らない。しまいには妻にも移住を迫られることになり、このままここに居続けるのが本当に良いのか、自問する日々が始まる。というところでこのドキュメンタリーは終わった。したがって魏さんが移住したかどうかはわからないままである。
『私は黄砂と闘う』(ドキュメンタリー)_b0189364_8441039.jpg 毎年のように日本に飛来する量が増えている黄砂であるが、その発生元で砂漠化が着実に広がっていることが現地の人間の視線で描かれていて、砂漠化というものがどういうものか身をもって知ることができる。今途中まで読んでいる『土の文明史』によると、世界史上の重大な出来事の多く(新大陸の発見、移住、旧教と新教の対立、フランス革命など)が、土壌の疲弊が遠因となって起きているという。そして土が過度に消費されて砂漠化がもたらされることで、やがて文明の崩壊がもたらされることになるとも。黄砂の最前線の状況を目の当たりにすると、この本の記述も非常な説得力を持って迫ってくるのである。
アメリカ・フィルム・ビデオ祭
クリエイティブ・エクセレンス賞受賞作
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『土の文明史(本)』
竹林軒出張所『デイ・ゼロ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2011-05-07 08:45 | ドキュメンタリー
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