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竹林軒出張所

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『中盆 私が見続けた国技・大相撲の"深奥"』(本)

b0189364_9203735.jpg中盆 私が見続けた国技・大相撲の"深奥"
板井圭介著
小学館

 大相撲の八百長を告発した本。元・小結板井がその実態を詳らかにする。
 本書は、1996年に出版された『八百長 相撲協会一刀両断』(元・大鳴戸親方著)に応える形で出版された。もっとも著者にしてみれば、別に呼応したわけではないようだが、内容は大鳴門親方の著書と対応しており、言ってみればアンサー・ブックのようなものになっている(そのため内容は詳細である)。ちなみに元・大鳴門親方は、板井の師匠で、『八百長 相撲協会一刀両断』を出した直後、後援者と同日に同病院で謎の死を遂げている。オーこわ。板井の方は、こういう本を出したにもかかわらず今でも健在(のようだ)。ただし相撲界からは干されている。
 内容は、板井が大相撲界に入り、やがて(親方の差し金で)八百長に手を染めて、中盆(八百長の仲介人)として活躍する大相撲時代を経年的に書いたもので、もちろん八百長システムについてかなり具体的な説明がある。大鳴門親方の八百長の説明とほとんど一致するもので、当事者の目による具体性がそれに加味されているという感じである。また、八百長力士が実名で紹介されており、八百長に手を染めなかった力士もあわせて紹介されている。当時のガチンコ(八百長でない本気の取り組み)力士の筆頭格であった大乃国との確執、つまり板井による大乃国への露骨な張り手についても詳しい説明があった。この点については、大鳴門親方の説明と違い、大乃国に対しての敵意やいじめではなく、最初の張り手が見事に入ってから、周りの付き人や力士にもう1回やってよみたいなことを言われて面白半分にやっていたと言うことらしい。板井は個人的には、ガチンコで奮戦する大乃国に好感を持っていたという。そもそも八百長に手を染める力士は、自分の星勘定のことしか頭にないため、集団で何かに対処する(共謀によるいじめとか)ということがないらしい。八百長システムはあくまでも「互助会」的なもので、板井は、要望があれば気前よく星を与えたため(もちろん見返りはもらう)徐々に信望を集めていき、多くの八百長力士が、相手との八百長交渉が暗礁に乗り上げたときに板井に手配を頼むようになったことから中盆の役割を果たすことになったということのようだ。ちなみにこれは本人の説明である(本書では、板井がガチンコではほとんど負けない実力者であり、しかも性格的に大きな人間であるかのように書かれている)。
 もちろん多少のバイアスはかかっているかも知れないが、自ら経験した事実が非常に具体的に書かれているので、相当な説得力がある。これだけの証言を突きつけられたら相撲協会もぐうの音も出ないのではないかと思うが、本書が出版(2000年8月)されてから先日の八百長問題に至るまで状況が一向に改善されていなかったのも事実である。また、本書では野球賭博や相撲賭博、マリファナなどに手を染める力士たちについても詳しく言及されている。どれもこれも先頃の八百長問題のときに明るみに出た事実である。ということは、協会も親方衆も、本書が出てから10年間、何の手も打たなかったということになるのだな。日本相撲協会の自浄作用というのは「ありそうでないもの」の筆頭格なのだということがよくわかった。
 それから、板井と親方の確執も非常に興味深い。実力があってもその親方と相性が悪いために潰れていく力士も多いらしく、部屋を自由に移行できない現制度にも問題を投げかけている。大相撲にまつわるさまざまな問題があぶり出されていて、中身は大変に濃厚であった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所:『今さらヤオチョー』
竹林軒出張所:『八百長はなぜ起きたのか(ドキュメンタリー)』

(本書による)相撲一口メモ:
1. 現・日本相撲協会理事長の放駒親方(元・大関魁傑)は現役時代、ガチンコ力士だったらしい。この人事を見ると、相撲協会もそれなりの意気込みで八百長に取り組むつもりのようである。ちなみにほとんどの親方衆は元・八百長力士である。
2. 当時の主流派、出羽の海部屋は、八百長をしない力士が多かった。また、藤島(のちの二子山)部屋の力士も八百長をしなかった。
3. 元・横綱千代の富士(現・九重親方)には53連勝という大記録があるが、このうち34番は八百長の取り組みであった。つまり正味19勝で、そのほとんどは下位力士である。また連勝記録を止めた大乃国は、当時数少ないガチンコ力士だった。
4. 千代の富士は、八百長の取り組みについても非常に利己的であったため(たとえば弟弟子の横綱・北勝海の星を回したりする)、いまだに協会内で人望がない。
5. 元・横綱北の湖(現・北の湖親方)も八百長力士であるが、もっぱら星を売るだけであった(あまりに強かったため?)。優勝決定戦では必ず星を売ると言われていた。そういうこともあって協会内では人望があるらしい。
by chikurinken | 2011-04-26 09:21 |
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