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竹林軒出張所

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『地下深く永遠に ~核廃棄物10万年の危険~』(ドキュメンタリー)

地下深く永遠に ~核廃棄物10万年の危険~
(2010年・デンマーク Magic Hour Films)
NHK-BS1

『地下深く永遠に ~核廃棄物10万年の危険~』(ドキュメンタリー)_b0189364_12142244.jpg フィンランドに建設中の核廃棄物最終処分場オンカロ。世界に先駆けて運用が始まる見通しだが、最終処分場とは言っても、実は地中深く(地下500m)に高レベル核廃棄物(原子力発電の際に発生するもの)を貯蔵するだけの施設に過ぎず、放射能が無力化するまでの10万年間、地上に影響を及ぼさない状態で核のゴミを放置するための施設である(核廃棄物最終処分場はどの国でも同じもの)。
 そもそも原子力発電では、核廃棄物の処理についてまったく考慮されておらず、したがってこういった廃棄物のやり場に困ることになる。廃棄物が次から次へと産出されてもそれについては一切顧みず、原発の良い面だけを強調して推進してきたのが、日本を含む先進国の政府である。その背景にあるのは「困ることは存在しないことにする」という究極の楽観性で、おかげで現在のわれわれは、廃棄物の処理について頭を悩ませなければならなくなる。だが後世の世代はもっと大変で、こんな危険なものを向こう10万年間もアンタッチャブルの状態でやり過ごさなければならない。
 さて、このドキュメンタリーでは、世界に先駆けて建設されるオンカロの関係者へのインタビューをつなぎ合わせて、オンカロを含む現在の原子力のシステムに疑問を投げかける。たとえばオンカロでは、10万年間人類がこの施設に侵入しないように、いろいろな言語とシンボルで警告信号を周辺に掲示していくらしい。そもそも10万年後の人類がどういった様相になるのかすら想像できないのに、そういった人々を想定して警告信号を残してもあまり意味がないと思うが、核廃棄物最終処分場に関しては、そういった議論を真剣にしなければならなくなる。そのあたりのバカバカしさは、インタビューを聞いているこちら側にも伝わってきた。
 よくできたドキュメンタリーではあるが、インタビュー中心で、しかもそれほど目新しい事実があるわけでもないため、途中少し退屈した。原発を取り巻くシステムの愚かさ加減は非常に良く伝わってくる。
2010年国際環境映画祭(パリ)グランプリ受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『原発を知るための本 5冊+1冊』
竹林軒出張所『核燃料サイクル 半世紀の軌跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場(本)』
竹林軒出張所『六ヶ所村ラプソディー(映画)』
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『調査報告 原発マネー(ドキュメンタリー)』
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竹林軒出張所『原発廃炉は可能か?(ドキュメンタリー)』
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by chikurinken | 2011-02-19 12:16 | ドキュメンタリー
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