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竹林軒出張所

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『道』(映画)

(1954年・伊)
監督:フェデリコ・フェリーニ
脚本:フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ
出演:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ、リチャード・ベースハート

『道』(映画)_b0189364_8222887.jpg 25年ぶりに『道』を見た。言うまでもなくフェデリコ・フェリーニの代表作で、イタリアを代表する名作映画ではあるが、最初に見たときはあまり良い印象はなかった。が、今回見直して、どこが引っかかっていたか思い出した。要するに、ジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナの表情がわざとらしくて嫌だったのだ。それに少女役のジュリエッタ・マシーナは当時33歳で、かなり無理がある。その辺が引っかかって、僕の『道』の評価を下げていたのだと気が付いた。
 そうは言っても今回見直してみると、映画としてよくまとまっている上、人間の悲しみみたいなものが表現されていて、名作という評判に違うことはない。野卑で利己的な男(ザンパノ)と純真な少女(ジェルソミーナ)という組み合わせの大道芸人が諸国を放浪するが、愛情や不信が渦巻きながらも、偶発的な出来事によって破綻を来していく。非常に特殊な舞台設定ではあるが、ザンパノとジェルソミーナの関係も、ある意味、どこにでもある男女関係のメタファーのようにも見える。
 イタリアン・ネオリアリズモ映画の代表として知られる映画である(事実僕もかつて「イタリアン・ネオリアリズモ映画祭」で見たのだ)が、他のネオリアリズモ映画とは少し違っていて、社会を描くのではなく人間を描いている。そういう意味ではフェリーニはネオリアリズモの作家とは言えないのかも知れない。
 ジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナは、この後『カビリアの夜』で(哀れな)娼婦を演じており、非常に好演していた。そういうこともあり、無理のある役柄の『道』よりも『カビリアの夜』の方を評価していたのだが、ましかし、そういうところに少しだけ目をつぶるならば、映像と言いストーリーと言い、この『道』はやはり名作の名に恥じない大変よくできた映画である。間違いない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『崖(映画)』
竹林軒出張所『サテリコン(映画)』
竹林軒出張所『チネチッタの魂(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2011-02-03 08:23 | 映画
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