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竹林軒出張所

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『田んぼにトキが舞いおりる』(ドキュメンタリー)

田んぼにトキが舞いおりる 〜佐渡 生き物と共生する米作り〜
(2011年・NHK)
NHK教育 ETV特集

b0189364_1139376.jpg 2008年、新潟県佐渡島の佐渡トキ保護センターから10羽のトキが放鳥された。一度は絶滅したトキを自然に帰すという取り組みはこれまで数十年に渡って続けられていたが、これによって、トキ復活プロジェクトは新しい局面を迎えることになった。
 トキの絶滅の原因はいろいろ考えられるが、その中に、トキの餌場である周囲の田んぼで農薬が使われるようになったことがある。つまり農薬のせいでトキの餌が少なくなったということらしい。そのため、トキを放ち野生のトキを復活させるに当たって、周囲の田んぼで餌がとれるようにするというのが大命題になってくる。というわけで、2001年、自治体により、保護センターの周辺で米の無農薬栽培をしないかという提案が農家に対して行われた。この申し出に応えた農家はわずか7件であったが、この7件の農家が「佐渡トキの田んぼを守る会」を結成して、米の無農薬栽培に取り組むことになった。このドキュメンタリーでは、その取り組みの始まりからトキの放鳥に至るまでの足跡を追っていく。
 無農薬栽培を始めるにあたり、不耕起農法を採用することにし、その提唱者、岩澤信夫氏を呼んで勉強会を開いたりもするが、当初は、雑草がはびこって収量が大幅に落ちるという惨憺たる状況が続く。それでも、消費者側の支援(労働参加や精神的な部分)を受けるなど、コミュニティも広がっていき、何より農業者の労働意欲が向上した。やがて農業者自身で雑草対策の工夫を重ねるなどして、収量も徐々に上がっていき、経営としてやっていけるメドがついてくる。その成功に伴い、かれらの会に参加する農家も増えてくる。こうして約10年かけて、トキのための周辺環境が整って、ついに放鳥に至ったのだった。放鳥後、トキも自然の中で生活するようになったが、いまだヒナを育てるという段階にはなっていないらしい。しかし、田んぼには自然が甦り、いろいろな生物があふれかえるようになっている。また、子ども達や近所の人々も田んぼに集まってくるようになり、さながら田んぼに生命が復活したかのようである。農業の原点に戻った農業者にも充実感と喜びがあふれているように見受けられた。
 トキがきっかけになって自然環境が甦っていく過程が過不足なく表現されており、内容の濃いドキュメンタリーに仕上がっている。「さすがETV特集」という充実した内容であった。

★★★★
by chikurinken | 2011-01-20 11:40 | ドキュメンタリー
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