電子書籍の時代は本当に来るのか
歌田明弘著
ちくま新書
『電子書籍の時代は本当に来るのか』というタイトルだが、明確な回答はない。また、それに直接触れた箇所は「あとがき」だけで、他はすべて、現状の報告に終始している。
第1章はこれまでの電子書籍端末の経緯、第2章はGoogleの書籍電子化にまつわる問題、第3章は無料だった新聞コンテンツの有料化に関連する事象についてそれぞれ述べており、正直とりとめがない印象である。また、記述自体もまどろっこしくとりとめがない印象で、読むのに苦痛を感じる。中身がスカスカの印象すら受ける。また一部、これまで他の雑誌や書籍から得た認識と違う部分が出てきて少し戸惑った(Amazonの電子書籍の取り分についてなど。どちらが正しいかは未確認)。
第2章で紹介されているGoogleの「図書館プロジェクト」にまつわる問題は、詳細がまとめられていて役には立ったが、読んでいて結論がどうなったかはっきりわからない(何となくはわかる)。こういうあたりも歯切れが悪く、とりとめがない感じがする。図書館側の反応(国会図書館の長尾真氏のプランの表明)は目新しく示唆に富んでいる部分もあったが、どうもこの方、著者に近い関係者のようで、何となく手前味噌みたいな感じもする。
内容的には他の書籍や雑誌で触れられていることばかりで目新しさはない上、争点が曖昧で読みづらい点もマイナスである。だが、こういう本をきっかけに電子書籍について考える機会が与えられるわけで、そういう点はプラスと言える。
★★★