怪人マブゼ博士(1932年・ドイツ)
監督:フリッツ・ラング
原作:テア・フォン・ハルボウ
脚本:テア・フォン・ハルボウ
出演:ルドルフ・クライン=ロッゲ、オットー・ヴェルニック、グスタフ・ディーズル
ドイツ黄金時代を代表するキャラクター、ドクトル・マブゼの第2作目。第1作目は1922年に製作されたサイレント映画だが、こちらはトーキーで、しかも完成度が高く、今見てもまったく違和感がない。非常によく練られた構成で、スリルとサスペンスの要素にあふれている。
前作で登場したマブゼ博士が甦るという話だが、なにぶん前作を見ていないので詳しいことはわからない。だがマブゼ博士を演じているのはどちらもルドルフ・クライン=ロッゲであるので、ストーリーはつながっているんだろう。ところどころ表現主義的な描き方が出てくるあたり、やはりドイツ黄金時代の映画だと思わせる。当時のドイツの世相などもよく描かれており、そのあたりも見所である。マブゼの陰謀がナチスの登場を暗示するようだとよく言われるが(DVDのパッケージにもなにやらヒトラーを思わせるような写真が使われている)、現在の我々の感覚から行くとオウム真理教の事件に近いような気がする。世情が不安定だと、世の中にこういう危険な雰囲気というものが漂うのだろうか……などと考えながら見た映画である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『M(映画)』竹林軒出張所『軽蔑(映画)』