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竹林軒出張所

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『生まれてバンザイ』(本)

b0189364_19473380.jpg生まれてバンザイ
俵万智著
童話屋

 歌人、俵万智のこれまでの短歌を集めたアンソロジー。
 中心になっているのは、子どもが生まれてからの歌で、それ以前の恋の歌もいくつか取り上げられている。出典は『サラダ記念日』や『タンポポの日々』などで、巻末に詳細な「出典一覧」があり、どの時期に詠まれたかよく分かるようになっている。
 タイトルは、
  バンザイの姿勢で 眠りいる吾子(あこ)よ そうだバンザイ 生まれてバンザイ
という歌から取られたもの(だと思う)。この歌からも伺えるように、幼子を思う母親の気持ちや、幼子に対峙することで感じることなどが短歌の形で綴られている。アンソロジーであるだけにどの歌も質が高い。思わず微笑んだりグッときたりで、俵万智の感性が随所に光っている。
 ただ、こうして恋の歌から、妊娠、出産、幼子の歌へと続けて開陳されると、女にとって恋などというものは、しょせん遺伝子を残す(つまり子どもを生んでで育て上げる)ための手段に過ぎないのではないかと思えてくる。そう考えると、なんだか非常に即物的な感じがして、寂しい気もする。恋はロマンスやエロスだなどと思っている男は愚かしい存在で、しょせんは使い捨てられる対象なのではないかと、まあこういうことをつらつらと感じたわけである。
 それはさておき、僕がこの歌集で一番気に入ったのは
  叱られて 泣いてわめいてふんばって それでも母に 子はしがみつく
という歌である。情景が思い浮かぶようで、なんとなく悲しい気持ちにもなってくる。
 歌は1ページに1首ずつ、3行ないし4行で書き連ねられている。装丁も美しく作りも丁寧で、大変好感が持てる良い本であるが、歌集であるだけにあまり売れないんだろうな……とも思う。

★★★☆

参考:
竹林軒出張所『たんぽぽの日々(本)』
竹林軒出張所『ちいさな言葉(本)』
竹林軒出張所『短歌をよむ(本)』

by chikurinken | 2010-11-02 19:49 |
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