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竹林軒出張所

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『アップル、グーグル、マイクロソフト』(本)

アップル、グーグル、マイクロソフト
クラウド、携帯端末戦争のゆくえ

岡崎裕史著
光文社新書

『アップル、グーグル、マイクロソフト』(本)_b0189364_20591590.jpg アップル、グーグル、マイクロソフトのクラウド・コンピューティングに対する取り組みを解説した本。
 最初の方にクラウド・コンピューティングについての解説もあるが、具体例が乏しくわかりにくい。僕はある程度わかっているつもりだが、それでもなかなか具体的なイメージが掴みにくかった。もう少しわかりやすい解説が欲しかったところ。
 また、アップルやマイクロソフトについても、どうも認識が甘いような気がするし、現状認識についても甘い。現状に対する正しいイメージを掴んでおかなければ、将来像を正しく描くことはできないと思う。実際、本書で描かれている将来像は、これもやはり甘いと言わざるを得ない。
 そもそもクラウドがメイン・ストリームになるかどうかすらよくわからない。というのは、どのプロバイダもクラウドの必然性を示せていないためである。つまり現時点では、クラウドはかけ声だけで、もちろん、将来的にはクラウド・タイプのインフラストラクチャが今以上に活用されることは予想できるが、全面的に移行するとは正直思えないのだ。どこかのプロバイダがその利用方法を提案し、その魅力的な使い方を提示できれば(つまり広い意味での「発明」)、それがスタンダードになる可能性はあるが、それについてはまったく未知数である。
 アップルがiTunesインフラストラクチャやiPodで行ったのはまさにこの「発明」であって、当時からすでに同様の技術はいくらでもあったが、それを整理して完成度が高いものにしたのである。厳密な意味での発明ではないが、使い勝手の良い形で再提示するという意味での「発明」である(そして消費者がそれをスタンダードとして受け入れた)。だから、今グーグルなどの企業がクラウドの重要性を訴えていても、それをちゃんとした形で提示できない限り、「発明」にはならないし、それがスタンダードになることもない……というのが僕の考えである。そういう発想で考えると、本書の認識は非常に甘いと言わざるを得ない。
 そういうわけで、新しいイメージが提示されているわけでもなく、物事に対するきちんとした認識が示されているわけでもないので、読んでいても実につまらなかった。クラウド関連の用語(SaaS、PaaS、IaaSなど)が最初の方で説明されていたのは良かった(僕にとってこれまでまったく意味不明な用語だったため)が、役に立ったのはそれくらいかな……。
★★☆
by chikurinken | 2010-10-01 21:00 |
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