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竹林軒出張所

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『プリンセス・シシー』(映画)

プリンセス・シシー(1955年・墺、西独)
監督:エルンスト・マリシュカ
脚本:エルンスト・マリシュカ
出演:ロミー・シュナイダー、カール=ハインツ・ベーム、マグダ・シュナイダー

『プリンセス・シシー』(映画)_b0189364_17292622.jpg 19世紀後半のオーストリア王妃、エリーザベト(シシー)と、オーストリア皇帝、フランツ・ヨーゼフ1世との世紀の恋を描いた映画。この映画には続編が2本あって、その後のエリーザベト王妃の悲劇的な生涯も描かれるようだが、正直あまり見たいと思わない。その程度のデキの映画であった。当時のアメリカ映画のような安直さと脳天気さで、かなり退屈に感じたためである。最近までこの三部作は日本未公開であったらしいが、そういう話を聞いてもあまり食指が動かない(すでに録画済みではある)。
 ただ1つ、この映画で注目に値するのが、主役のシシーを演じているロミー・シュナイダーである。ロミー・シュナイダーと言えば、僕にとって一番印象深いのが、ルキノ・ヴィスコンティが監督した『ルートヴィヒ』での演技である。この映画では、主人公のルートヴィヒ2世と親しい関係のいとこを演じていたが、どうもこの『プリンセス・シシー』を見ているうちに、『ルートヴィヒ』で演じていた役柄とこの映画で演じている役柄が同一人物のような気がしてきた。両方とも19世紀後半のバイエルンの貴族であるし、少なくとも双方の役柄の人物はかなり近い時代、地域に住んでいたのではないかと思い、見終わった後、ヤホーで調べると、案の定、同一人物なのだった。つまり狂王ルートヴィヒが恋心を抱いていたいとこは、エリーザベト王妃だったというのである。つまり、ヴィスコンティ監督は、『ルートヴィヒ』において、この『プリンセス・シシー』を踏まえた上で、ロミー・シュナイダーにエリーザベトを演じさせたわけである。
 また、ロミー・シュナイダーについてよくよく調べてみると、この『プリンセス・シシー』が代表作になったということで、ロミー・シュナイダー自身が、この映画のために「シシー」という愛称で呼ばれていたらしい。この映画が永らく日本未公開であったこともあり、こういう話もまったく初耳だった。つまりあれだ。たとえば黒澤明クラスの巨匠監督が、たとえば千利休の映画を作るときに、大河ドラマで豊臣秀吉の当たり役をとった緒形拳(『太閤記』と『黄金の日々』で二度秀吉を演じている)を秀吉役として使うという、そんな感じだと思う。実際『ルートヴィヒ』でのロミー・シュナイダーは、ミステリアスで、ちょっと恐怖感さえ感じさせるような役柄であった。ただ、『プリンセス・シシー』のエリーザベト役は浅薄で、ちょっと同一人物には見えない。それに、同じ役者であるということさえ、名前を見なければ気付かなかったんではないかと思う(年齢も違うが)。それくらい、映画の奥深さもロミー・シュナイダーの印象も、両方の映画でまったく違う。これがつまり、映画の格ということになるんだろう。そういうわけで、『ルートヴィヒ』との違いばかりが目立つ映画だったのだった。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『若き皇后 シシー、シシー ある皇后の運命の歳月(映画)』
竹林軒出張所『ルートヴィヒ(映画)』

by chikurinken | 2010-09-18 17:30 | 映画
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