しあわせのかおり(2008年・東映)
監督:三原光尋
脚本:三原光尋
出演:中谷美紀、藤竜也、田中圭、八千草薫
市井の料理人にシングル・マザーの女性が弟子入りするという自分探しの映画だが、どことなく
『のんちゃんのり弁』を彷彿とさせる話である。言ってみればよくあるストーリーで、映画でもテレビでも頻繁にリサイクルされるような話である。登場人物がそれぞれのマイナス面を補い合いながらプラスに転じさせ大きな幸せを作り上げるというハートウォーミングなストーリーであるため、万人受けしそうで、そのあたりが使い回しされる理由なんだろうと思う。
ただし本作は、ストーリーはともかく、全体の作りが非常に丁寧で、映画としては上質である。料理(すべて中華)のシーンが多いのも楽しい。もともと料理のシーンが目的で見た映画ではあるが、それについては十分で、ほんとうに「おなかいっぱい」という感じである。キャストの中谷美紀や藤竜也も、それなりに中華料理のトレーニングを積んできたのではないかと思われるほど、調理シーンが自然に見えた。といってもこれは、料理の素人である僕の目から見ての話である。演出面も手堅く、スタッフの力量を感じさせられる。舞台が金沢ということもあり、僕はてっきり原作ものかと思ったが、監督のオリジナル作品のようだ(これについては未確認)。よくある話ではあってもディテールが非常によくできていたので、原作もののような気がしたんだが、そのあたりは脚本家(つまり本作では監督ではあるが)の力量と言うことができる。ただ、中国のシーンは不要ではないかと思った。このシーンについてはちょっともたついた印象がある。
とは言え、全体的に破綻はなく、ドラマとしても料理映画としても優れた作品に仕上がっていて、安心して見ることができる。家族で見ることができる優良映画であると思った。大変おいしゅうございました!
★★★☆参考:
竹林軒出張所『のんちゃんのり弁(映画)』