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竹林軒出張所

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『鬼太郎が見た玉砕』(ドラマ)

鬼太郎が見た玉砕 〜水木しげるの戦争〜(2007年・NHK)
原作:水木しげる
脚本:西岡琢也
出演:香川照之、田畑智子、塩見三省、嶋田久作、石橋蓮司
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 水木しげる作の『総員玉砕せよ!』をドラマ化したもの。2007年にNHKスペシャルで放送されたものが、今回NHKハイビジョンで再放送された。
 現代(昭和50年頃)に生きる「水木しげる」の回想形式になっており、回想の中で太平洋戦争時のガタルカナル戦が再現される。ほとんどが水木しげるの経験に基づいたものであるため、真に迫っていて、そこらあたりの安直な戦争ドラマを吹き飛ばすだけの迫力がある。戦争といっても、所詮は人間の営みであるため、人間同士の関係性が主体になるわけで、その辺もよく伝わってくる。権力というものが持ちあわせる理不尽さや、制御できなくなった集団行動のばかばかしさもよく表現されている。
 途中、ねずみ男、鬼太郎、目玉親父が語り部として登場する。水木作品でときどき使われる手法で、悪くない。なにせガタルカナルの戦場ドラマがあまりにも重いので、これをずっと展開されても見ている方も気が滅入る。そのためもあってか、折に触れ、現代の水木プロに戻ってくるという回想形式が採用されている。鬼太郎のキャラクターが出てくるのも現代のシーンで、生きている水木しげるが実感させられることもあって気が休まるのである。それぞれのキャラクターの声には、60年代/70年代版テレビ・アニメの声優(それぞれ大塚周夫、野沢雅子、田の中勇)のものが使われているのも大変良い。80年代以降に放送されたアニメの鬼太郎はポップに変化していて、しかも声も変わっている。イメージがかなり違っていてなんだか気持ちが悪いので、こういう配慮はうれしい(水木プロの場面が1970年代という設定であるためか)。
 水木しげるを演じる香川照之が、水木しげるの特長をよくつかんで演じており(物まねに近い)やはり芸達者である。戦場で満足に食べられなかったこともあってか、昭和50年代のシーンではやけに食べるシーンが多い。しかも「餓鬼のように喰らう」といった感じでがっついていて、平和(そして食べ物があること)の尊さが巧みに表現されている。
平成19年度(第62回)文化庁「芸術祭」【テレビ部門】ドラマの部・優秀賞受賞
★★★☆

参考:
NHKスペシャル「鬼太郎が見た玉砕 〜水木しげるの戦争〜」
竹林軒出張所『総員玉砕せよ!(本)』
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『敗走記(本)』
竹林軒出張所『野火(映画)』
竹林軒出張所『俘虜記(本)』
竹林軒出張所『ゆきゆきて、神軍(映画)』
by chikurinken | 2010-08-13 10:30 | ドラマ
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